「何をしでかすか分からない」ドナルド・トランプ米大統領が今や国際社会にとって,いや世界各国・地域の政治・経済・産業・金融・貿易・エネルギー・環境・教育など全ての問題の先行きに多大な影響を与える「DCリスク」と呼ばれるようになった。2月28日に首都ワシントンDCのホワイトハウス(WH)西棟の大統領執務室(オバールオフィス)で行われた米・ウクラナイナ首脳会談と,3月4日に米連邦議会上下両院合同本会議で行われた大統領施政方針演説の2つで世界を震撼させた。心底恐怖心を与えた。初手の米・ウ首脳会談でウォロディミル・ゼレンスキー大統領自ら英語で改めてトランプ大統領に対しロシアによるウクライナ侵略をアピールした上で,胸中では米露間の停戦交渉に消極的であったとしても期待感を表明した。と同時に,米国が求める同国のチタンなど鉱物資源の権益を巡る協定締結応諾を示すも停戦後の「安全の保証」という文言を共同声明に盛り込むことに拘泥した。
そこでトランプのボディランゲージから不満を感じ取ったJ・D・バンス副大統領がトランプ・ゼレンスキー“口論”に参戦し「感謝の言葉が無い」「この部屋での侮辱は許されない」と速射砲のごとくゼレンスキー攻撃を始めた。ゼレンスキーも反論・応酬するも相手はトランプ・バンス連合だ。敵うはずがない。▶︎
▶︎これが決定打となって米・ウ首脳会談は決裂に終わった。ゼレンスキーは退室後,実は“お許し“があるかもと暫く別室で待機していた。だが,マイク・ウォルツ大統領補佐官(国家安全保障担当)が現れて「直ちにWHから退去してほしい」と引導を渡されたのだ。
ここからがトランプの真骨頂である。対ウクライナ軍事支援の一時停止を発表,英仏など北大西洋条約機構(NATO)加盟主要国を震撼させた。すると4日のトランプ演説の中でゼレンスキーから「関係修復を求め,鉱物資源に関する締結協議に前向きである」との書簡を受け取ったと紹介。翌5日には件のウォルツが米FOXニュースで対ウクライナ関係は「前向きな方向に進んでいる」と発言,米中央情報局(CIA)のジョン・ラトクリフ長官はウクライナとの機密情報の共有を一時停止していたと明かした。トランプ政権のキャロライン・レビット大統領報道官は同5日,カナダとメキシコ両国産品に発動した25%の関税について,自動車への適用を1カ月免除すると発表した。最早死語の「ビッグスリー」(米GM,米フォード,欧ステランティス=クライスラー3社)のトップがトランプに救済要請を行ったからだ。発動1日で修正。トランプの好き放題に振り回され続く…(以下は本誌掲載)申込はこちら