財務省(新川浩嗣事務次官)を標的に「解体せよ!」と声を上げる「財務省解体デモ」が,全国的広がりを見せている。3月14日は霞が関の本省だけでなく,各地の財務局など12カ所でデモが行われた。その波は収まらず,21日は警視庁が桜田通りの正門に車両を留めて街宣車の行動を妨げる中,新党くにもりの代表でチャンネル桜を主宰する水島総が警備の警察官に抗議しつつ演説を行い,その後も他団体のデモが続いた。財務省解体デモは,緊縮財政に抗議して消費税の削減,ないし撤廃を求めること以外に共通項はなく,あらゆる立場のあらゆる団体が,「右」も「左」も参加している。政党としての直接参加はないが,解体デモにつながる「103万円の壁」で今回の呉越同舟の反対運動をもたらした国民民主党(玉木雄一郎代表),リベラルな立場から「消費税ゼロ」を主張しているれいわ新選組(山本太郎代表),保守の立場から「反緊縮財政」を訴えてきた参政党(神谷宗幣代表)や日本保守党(百田尚樹代表)が,デモ隊の主張に連動する。産経新聞・FNN合同世論調査(2月22~23日実施)で,30代の政党支持率は国民民主党(15.9%)がトップでれいわ新選組(14.4%)が続き,自民党(11.2%)が3位に転落して衝撃を与えたが,新聞・テレビでは分からないSNSが主導する世論を,財務省解体デモは浮き彫りにしている。▶︎
▶︎そもそも解体デモは東京を中心に,統一されない小さな抗議運動として始まった。メンバーは「元祖!財務省前デモ」として活動を行っていた池戸万作,政治団体「新生民権党」代表の塚口洋佑,「シバやんの社交らぼチャンネル」を持つ柴田泰孝などだ。ユーチューブなどのSNSやブログやnoteで情報発信している彼らの賛同者の数は限られているものの,同調するユーチューバーは多く,「同好の士」がSNSで連帯する。その先にいるのがメンター(指導者)で,元大蔵官僚の高橋洋一嘉悦大学大学院教授の高橋洋一チャンネルは128万の登録者数を誇り,反緊縮財政の立場から財務省を批判して三橋塾を運営する三橋貴明の三橋TVは76万だ。
また,自らはチャンネルを持たなかったが,経済アナリストの森永卓郎は財務省を巨大カルト教団に見立てて『ザイム真理教』を上梓した。同書は30万部を超えるベストセラーとなって財務省反対派を増やした。彼らの国の財政に関する考えはそれぞれ違うものの,「国債をいくら刷ってもデフォルトすることはない」「プライマリーバランスをゼロにすることに意味はない」というところは共通していて,自公政権が国債残を怖れるのは「財務省の刷り込みだ」と政権と財務省を批判する。なかでも森永は今年1月28日に癌で死去。痩せ衰えても情報発信を止めず,その姿勢が森永を殉教者にした。さらに反緊縮,反消費税だけでない動きもある…(以下は本誌掲載)申込はこちら