何となく既視感(デジャヴ)があった――。今号記事を書くに当たって丁度1年前のNo.696 2024年4月25日号を取り出し,読んでみて驚いた。当時は4月28日投開票の衆院3補選を控えた岸田文雄政権で,<Cover story>冒頭は次のような書き出しで始まる。「全国紙4社の最新世論調査で内閣支持率と自民党支持率が4紙共に微増ながら上昇した」として,朝日,毎日,読売新聞と産経新聞・FNN合同調査の結果を詳述した上で,こうも記述している。「……28日夜のNHKは大河ドラマ放映を20:10に設定しており,それまでに開票速報で『自民3戦3敗』を打つ。
ではなぜ,僅かであれ支持率が上昇したのか。やはり今回の岸田首相の国賓待遇訪米(4月8~14日)が好感されたということだ」。現地時間11日午前の米連邦議会上下両院合同会議での首相演説と10日夜にホワイトハウス(WH)で催された公式晩餐会でのスピーチがかつてない高い評価を得たとも書いた。翻って1年後の25年4月22日時点で集計した上述4紙の世論調査結果を紹介する。「朝日」(4月19~20日実施):内閣支持率前月比4P増の30%,不支持率3P減の56%,「毎日」(12~13日):支持1P増の24%,不支持3P減の61%,「読売」(11~13日):支持±0の31%,不支持4P減の54%,「産経」(19~20日):支持2.9P増の33.3%,不支持1.5P減の61.5%。同時期に実施した日本経済新聞世論調査(19~21日)は支持率2P減の33%,不支持率1P増の60%で,他4紙とは逆トレンドである。▶︎
▶︎それでも丸1年前と比較してみると分かるように,石破茂政権の内閣支持率が微増ながらも上昇した理由は容易に想像できる。4月5日午前0時すぎ(米東部時間),ドナルド・トランプ米大統領が自信を持って発動したはずの高関税政策「トランプ関税」に対し,米国市場は株式・債券・ドルがそろって下げる「トリプル安」となった。想定外の市場の“逆襲”に泡を食ったトランプ政権は軌道修正を模索している。それでもトランプ節は止まらない。「解任」をちらつかせて米連邦準備制度理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長に強く利下げを求めるが,通貨の番人は慎重姿勢を崩さない。この利下げ催促がさらに米国売りを加速し,国内外から批判の集中砲火を浴びたトランプは22日,こうした朝令暮改の悪循環の中で軌道修正を余儀なくされた。
その手始めとして最初の関税(貿易)交渉相手に選ばれたのが石破政権である。そしてトランプは16日夕,首相特使の赤澤亮正経済財政・再生相と50分間会談した。「格下」を言い募る赤澤をWH大統領執務室に招き入れたのは異例中の異例だ。赤澤一行はその後,ベッセント財務長官,ラトニック商務長官,グリア米通商代表部(USTR)代表の3閣僚と75分間も会談した…(以下は本誌掲載)申込はこちら