5月8日の「首相動静」によると,石破茂首相は<19:12~20:43東京・四谷の「日本料理 さくま」で森山裕自民党幹事長と会食。妻佳子さん同席>とある。確かに,同店は住所では新宿区四谷4丁目であるが,利用客には「新宿御苑前のさくま」で知られる。そして同店は,永田町流に言えば,森山の「店」であり,その日の夜の石破・森山会食は森山の声掛けであったことが分かる(支払いを含む)。
さらに「動静」に記述されていないが,石破が夫人を同伴したように森山は国会事務所の政策秘書の長女YMを伴った。男1人と女2人の父親である森山の長女が東大法学部卒業のズバ抜けて優秀な議員秘書であることは永田町関係者の間では知る人ぞ知る。森山が2015年10月の第3次安倍晋三内閣で農林水産相として初入閣を果たした時に大臣秘書官を務めた。同長女は当時の内閣官房TPP(環太平洋パートナーシップ)政府対策本部の鶴岡公二首席交渉官(後の駐英大使),大江博交渉官代理(同駐伊大使)らと農水省側の当時の齋藤健副大臣(前経済産業相),大沢誠官房総括審議官(後に農水審議官)らと共に丁々発止の農業保護の政策立案にも関与したことは秘めたエピソードとして霞が関では知られる。ではなぜ,僅か1時間30分余の自民党総裁と幹事長の会食に斯くも拘るのか。▶︎
▶︎もちろん,理由がある。政権党のツートップそれぞれが夫人,長女同伴であることからも窺えるように,同夜の会食はセレモニーの意味合いが込められている。メディア各社は夏の参院選に関する意見交換が主たるテーマだったと報じた。想起すべきは森山が自民党「農水族のドン」であり,旧大蔵族の主要メンバーあることを忘れてはならない。党税制調査会(会長・宮澤洋一元経産相=旧大蔵省OB)顧問であり,インナーメンバーでもある。参院選初当選(98年),参院から衆院への鞍替え(04年),財務副大臣(07年の第1次安倍内閣)も経験する森山を終始引き立てたのは,「大蔵族のドン」とされた故青木幹雄元官房長官。青木のDNAを継承しているのだ。従って,現下の異常な物価高対応の具体策を提示出来ていない石破政権に対し,立憲民主党など野党からだけでなく自民党一部からも消費税減税を求める声が高まるなかでも森山は,「食品消費税率8%をゼロ」も含め反対論を唱えていた。
一方の石破も,消費税減税にはもともと否定的な言動で知られ,閣内では村上誠一郎総務相と同じ立ち位置を共有する。即ち,石破,森山両氏はこの会食を通じて参院選で消費税減税を公約に掲げることはないと意思表示した事実上の“儀式”であった。自民ツートップの意向はともかく,7月20日実施の参院選の結果次第では石破首相退陣もあり得る。焦点は,自民,公明両党で非改選(自民62,公明13の計75議席)と合わせて参院過半数に届くかどうかである。改選となるのは自民52,公明14の計66議席で,両党で50議席を確保すれば過半数(125議席)に達する。昨秋の衆院選に続き自公合わせて過半数を大幅に割り込めば石破は直ちに引責辞任を表明し,お盆休み明けには自民総裁選が行われて次期総裁が選出される。「政局夏の陣」到来であれ,夏以降秋の臨時国会までの政治日程がきちんと見通せる…(以下は本誌掲載)申込はこちら