この間の石破茂内閣支持率と自民党支持率の下落・低迷の理由として政権党・自民党の“やらない(できない)症候群”が指摘されていた。曰く消費税減税をやらない,曰く給付金をやらない,曰くコメ増産をやらない,曰く年金底上げをやらない,曰く対米関税交渉ができない――。
だが,ここに来て様相が少々変わりつつある。コメ増産とまでいかないが,小泉進次郎新農林水産相は5月23日の閣議後の記者会見で,「放出する政府備蓄米は来月初めに5㌔2000円台で店頭に並ぶ」と言明した。年金改革関連法案を巡り,自民,公明両党と野党第1党・立憲民主の3党は厚生年金の積立金を活用した基礎年金(国民年金)の底上げ策を法案の付記に明記する修正案で週明けに合意する。月末30日に同法案は衆院を通過し,通常国会会期内成立の可能性大である。
一方,石破がドナルド・トランプ米大統領と45分間の電話会談を行った23日午前,赤澤亮正経済財政・再生相は3回目の関税交渉のため訪米した。ワシントン滞在中にハワード・ラトニック商務長官と90分,ジェイミソン・グリア通商代表部(USTR)代表と2時間,それぞれ個別に協議した赤澤は帰国前に「突っ込んだ議論ができた。早期の合意を目指したい」と記者団に語った。▶︎
▶︎その1週間前の『読売新聞』世論調査(16-18日実施)で「日本政府がトランプ政権と行っている関税交渉に期待できますか,できませんか」の問いに「期待できない」との回答が72%に達していた。赤澤は再渡米し30日に,今回会えなかった米側交渉団統括役のスコット・ベッセント財務長官と協議する。石破は6月15~17日にカナダ西部のカナナスキスで開催される主要7カ国首脳会議(G7サミット)に合わせた石破・トランプ会談での「関税交渉合意」に強い期待を抱く。
遅くとも参院選公示日(7月3日)前後までに決着を見たいという。その成否のカギを握るキーマンはベッセントである。弊誌編集長がウェブマガジン『現代ビジネス』(22日付)に書いた「トランプ政権の弓削道鏡コンビ」としたスティーブン・ミラー大統領次席補佐官(国家安全保障担当・39歳)とスティーブン・ミラン大統領経済諮問委員会(CEA)委員長(40歳)の2人―共にスキンヘッド―が「米国ファースト」のコンセプトメーカーであり,貿易・通貨政策のアドバイザーである。因みに編集人に届いた反応に「道鏡,(ジョゼフ・)フーシェ,(グリゴリー・)ラスプーチン,歴史は韻を踏みますね」とあった。至言だ。これまで2人のスティーブンが,マーケットを熟知している国際協調派のベッセントに立ちはだかる対立構図とされた…(以下は本誌掲載)申込はこちら