筆者の手元に「参議院議員選挙調査結果一覧/調査日:2025年5月16日~18日」と題されたA4判14頁(横書き)の小冊子がある。調査依頼者は自民党である。永田町・霞が関では、「自民党 情勢調査」と呼ばれるものだ。4月は11~13日に実施された。正直、その調査結果の概要は5月の大型連休期間中に聞き及んだが、小冊子その物を入手したわけではなかった。因って耳にしたのは、自民党単独47議席で過半数に16届かないが、公明党の8議席を合わせると55議席で、自公の非改選議席75を加えると130議席になり参院過半数125を辛うじて5議席上回る――という基本情報だけだった。
しかし今回は別途、「参議院選挙の情勢調査の概要」と題したA4判4頁(縦書き)も一緒に入手した。同冊子冒頭に「調査日:令和7年5月16日~18日、対象選挙区:全選挙区、サンプル数:3000サンプル」と記され、その後段に「調査結果」として調査結果のポイント、調査内容の詳細が記述されている。自公の改選議席66(自民52、公明14)が5議席減の61であり、非改選議席75を合わせると136議席となり、過半数125を11議席上回る。前回4月調査から6議席増。
だが、先の「調査結果のポイント」は次のように指摘している。《前回と比較して自民党が2議席増え、49議席となっていますが、野党共闘が不十分な状況での議席数でありますので、野党共闘が進むと、自民党の議席数は7~8議席減ることが予想されます。従って、野党共闘をさせないことが最大の戦略であると考えます》。今調査結果が自民、公明両党に少々甘すぎるとの指摘があることからか、このような自民候補陣営の引き締めを忘れていないのだろう。それだけではない。《また、前回調査からポイント差が増加した候補は24名いる一方、ポイント差が減少した候補も24名いるため、わが党の勢いは、決して安泰ではありません》と続く。「調査内容の詳細」についても、文字通り具体的だ。▲1人区(32選挙区)…20名当選圏内 前回調査+1、▲複数区(候補者1名=10選挙区)…10名当選圏内、▲複数区(候補者2名=3選挙区)…北海道・千葉各1名、東京2名当選圏内、▲比例代表…15名 前回調査+1――。
これもまた「注釈」がついている。《前回調査時より、自民党支持者や公明党支持者は固まりつつありますが、無党派層の支持は逆に減っていますので、無党派層に響く目玉政策が必要です》。▶︎
▶︎全くその通りである。然るに、「例えば」として7項目の政策提言がリストアップされている。①所得税の基礎控除、給与所得控除の引き上げ。②食料品を所得税の控除対象とする。③ガソリン税の暫定税率(25.1円)廃止。ガソリン代値下げ。④社会保険料の据え置き。⑤再生エネルギー賦課金の徴収停止と電気代値下げ。⑥備蓄米の継続的な放出と米の更なる増産など米価対策。⑦物価高、トランプ関税対策のための現金給付。などこのリストを吟味すれば分かるように、石破茂政権・自民党執行部はこの情勢調査結果が判明した3日後の5月21日に新しい農林水産相に小泉進次郎氏を起用し、あっという間に⑥を実現して予想を遥かに超えた「小泉効果」を見せつけた。⑦については、前回当コラムで言及したように今国会会期末(6月22日)までに一律5万円×2年間=10万円の現金給付の今秋実施を閣議決定する。いずれにしても、焦点のNHK世論調査(6月6~8日実施)で石破内閣、自民党支持率共に上昇する可能性が高い。前回調査(5月9~11日実施)は内閣支持率33%、自民党支持率26.4%であった。どれだけ上がるのか、注目したい。
こうした中、石破首相の最側近であり対米関税交渉責任者である赤澤亮正経済財政・再生相は5日から4日間3週連続5回目の交渉で訪米する。米側総括責任者のスコット・ベッセント財務長官と日米交渉の枠組み合意の可能性を探る。まさに「東京~ワシントン・シャトル交渉」である。そして6月15~17日にカナダ西部のカナナスキスでの主要7カ国首脳会議(G7サミット)開催直前に米ワシントンで、あるいは24~25日にオランダのハーグで開かれる北大西洋条約機構(NATO)首脳会議に合わせて同地で石破首相がドナルド・トランプ大統領との会談で日米関税交渉の基本合意に持ち込むことができれば支持率上昇は確定的だ。すなわち、参院選での自公過半数維持・石破首相続投という流れに棹さすことになる。