参院選は政界再編の序章になりそうな気配すら帯びてきた。メディア各社が公示後に行った序盤情勢調査を括ると,与党の自公目標「非改選議員を合わせて過半数」は「微妙」が最大公約数である。サンプル数が14万人強と多い(従って誤差が少ないと見込まれる)読売新聞・日本テレビ合同調査(7月3~4日実施)結果を代表例に引く。①自民は選挙区,比例代表合わせて40議席前半。改選の52議席を大幅に下回る②公明は改選14議席を下回り,10に届くかどうかギリギリの戦い③立民は改選22を上回り,20台後半を覗う④国民民主は10台後半⑤参政党は2ケタが見える(因みに共同通信調査=5~6日実施では比例投票先で自民に次ぐ2位)⑥維新は3年前の勢いなし⑦共産は改選7議席を割り込む⑧れいわは2議席から上積みの可能性――といった塩梅である。東京都議選(6月22日投開票)のトレンドがそのまま継続しているような調査結果だ。
ここでは,少し先走って仮に自公が参院で過半数割れに追い込まれた場合を想定して,その後の政局をシミュレーションしておきたい。言うまでもなく,衆参とも自公が少数与党になれば,総裁(幹事長も)の退任,石破茂内閣の総辞職が現実味を増す。▶︎
▶︎次なる展開は3ケース考えられる。(1)与野党の政権交代(2)自公と野党との新たな組み合わせによる連立政権発足(3)現状のまま石破政権続投。(1)のケースは永田町が上へ下への大混乱だ。お盆明けに新たな自民党総裁を選ぶ段取りになるだろうが,衆参とも少数与党下で逆風に向かって突き進む「ドン・キホーテ」は果たして出てくるのか。考えられる候補としては,前回総裁選で名乗りを上げた面々が浮かぶ。内に物価高対策=現金給付と消費税減税の選択や手取りアップ,外に日米関税閣僚協議の不調による8月1日からの新関税率発動が迫っており,党員を含めたフルスペックで総裁選を実施する余裕はない。両院議員総会での選出となれば,石破政治の継続性から林芳正官房長官,あるいは加藤勝信財務相が急場しのぎのリリーフ投手で選ばれる可能性はある。霞が関は林,加藤の手堅さを評価する。
しかし,新総裁が国会での首班指名選挙で首相に選ばれる保証はどこにもない。何せ自民は少数与党である。前回,野党は候補を一本化できなかったため比較第1党の自民候補が漁夫の利を得た。今回,野党が一本化してくるなら,野田佳彦立憲民主代表か玉木雄一郎国民民主代表が考えられる。
というか,その他の党首は首相のリアリティに乏しい。反自民での結束より自党ファースト意識の強い野党各党なので一本化への絞り込みはかなり難しい作業となる。野党間で足の引っ張り合いが起きるなら,それを脇目に(2)の新たな組み合わせによる連立政権の発足は,永田町ではかなり現実味のあるテーマとして口の端に上っている。政治史を振り返れば,自民1党で政権を維持できたのは,「55年体制」が続いていた時までだ。1993年,宮沢喜一政権が総選挙で敗北,約40年続いた「55年体制」が崩壊してから,その後に誕生した与野党逆転を含め政権すべてが連立による政権である…(以下は本誌掲載)申込はこちら