小泉進次郎農林水産相は10月1日午後、フィリピンの首都マニラで開かれる東南アジア諸国連合(ASEAN)+3(日中韓)の農相会合出席のため、成田空港からニノイ・アキノ国際空港へ発った。よって自民党総裁選、最後の地方演説会である2日の大阪市講演会を欠席する。そして1日には、先週の「週刊文春」で明らかになった小泉陣営による「ステマ」問題についての文春砲第2弾と、新手の「週刊新潮」が世上に届いた。
果たして、小泉氏は「ステマ」問題追及から逃れるために、立候補者が選挙期間終盤の大臣公務(海外出張)という異例の決断を行ったのか。間違いなく「悪手」である。批判の集中砲火を浴びるのを避けるために逃げたと叩かれるのは必定だ。しかも自陣営から政務担当の若手議員が随行せずと聞くが、同行記者対応を本人に任せているとしたら危機管理センスゼロである。加えて、週明けから様相が変わってきている。選挙期間中盤に失速したかにみえた高市陣営の衆参院議員への働きかけが急速に強まっている。9月30日、高市早苗前経済安全保障相が麻生太郎党最高顧問の衆院第1議員会館内の事務所を訪れて、18日に続いて支援を改めて要請した。85歳の麻生氏は今も地元・福岡で、85歳の古賀誠元幹事長との「遺恨戦争」を視野に入れ、蠢動することが少なくない。古賀氏が林芳正候補(官房長官)を支援しているからだ。それ故に麻生氏には高市氏推しの目算がある。すなわち、決選投票で高市候補に麻生派票を乗せて限りなく小泉候補に肉薄させることで、小泉陣営が総裁選後の党執行部人事と、15日午後に予定される衆院本会議での首班指名選挙後の閣僚人事で高市系を起用せざるを得なくする老獪な手立てである。
では、永田町と霞が関が息をひそめて見守る総裁選の覇者・小泉氏が樹立する政権の陣立てを予想する。小泉陣営にとってのワーストシナリオは、小泉氏が僅差の勝利で総裁に選出され、直ちに発表することになる党執行部人事の要である幹事長に高市氏の起用を余儀なくされることだ。かつて安倍晋三氏が総裁選決戦投票で石破茂氏に逆転勝利したが、泣く泣く幹事長に石破氏を起用した先例がある。余裕をもっての勝利であれば、幹事長候補に①小泉選対本部長の加藤勝信財務相、②党内のバランスパワー重視から麻生氏義弟の鈴木俊一総務会長、③長期政権を視野に早期の衆院解散・総選挙狙いでサプライズの小渕優子組織運動本部長(代行・森山裕幹事長とセット)、④この1年間「チーム小泉」のキャプテンだった木原誠二選対委員長――が有力視される。▶︎
▶︎現時点(10月2日)で、小泉進次郎農林水産相が総裁選で勝利する可能性が最も高いと見られる。 前編記事『高市早苗を重用せざるを得ない状況も…総裁選勝利を目前にした小泉進次郎政権の幹事長候補に挙がる「5人の名前」』では、いち早く小泉政権の幹事長人事を予想した。決選投票で小泉氏が高市早苗前経済安全保障相に肉薄されれば、高市氏の幹事長起用を余儀なくされるかもしれない。
一方、小泉氏が余裕をもって勝利すれば、幹事長候補には、①小泉選対本部長の加藤勝信財務相、②党内のバランスパワー重視から麻生氏義弟の鈴木俊一総務会長、③長期政権を視野に早期の衆院解散・総選挙狙いでサプライズの小渕優子組織運動本部長(代行・森山裕幹事長とセット)、④この1年間「チーム小泉」のキャプテンだった木原誠二選対委員長――が有力視される。①、②のいずれの場合でも幹事長代行は木原氏が就くはずだ。④では出馬した小林鷹之党経済安全保障推進本部長など、有為な中堅・若手を抜擢する。幹事長代行には党4役の選対委員長や党7役の国対委員長のようにSPが付かないが、党役員会で発言権がある上に、所掌はあらゆる党務に及ぶ。極めて実利性が高い役職なのだ。幹事長を中心に、政権発足までに連立の組み替え・拡大協議を一気呵成に野党の日本維新の会(藤田文武共同代表)と行わなければならない。同党の藤田共同代表、中司宏幹事長とは木原氏が、そして吉村洋文代表(大阪府知事)、創始者の松井一郎元代表とは菅義偉元首相(or菅氏の体調が優れないので森山氏)が協議を担う。今も隠れた実力者である松井氏には、連立拡大に不可欠な「副首都構想」所管担当相か、すそ野を広げて地方創生相を打診すれば「一発回答」ではないか。さすれば最速で10月17日に新首相の所信表明演説となり、臨時国会会期中の比較的早い時期に、物価高対策の財源に必要な2025年度補正予算案の編成・成立も叶う。
では、小泉政権の要となる官房長官人事である。ほぼ間違いなく齋藤健前経済産業相だ。小泉進次郎氏にとって木原氏が信頼できる兄貴分とすれば、齋藤氏は敬して接すべき叔父貴である。それだけではない。政策力、組織力、発信力、そして人間性。どれ一つを取っても並外れた政治家である。今、小泉陣営で難航していると聞き及ぶのが、官邸を機能不全に陥らせないために最も重要なポストである首相政務秘書官の人選だという。奥原正明元農林水産事務次官(79年入省)、安藤久佳元経済産業事務次官(83年旧通産省)、大石吉彦元警視総監(86年警察庁)などの名前が挙がる。だが、確定情報は無い。首相事務秘書官は主要3省で言えば、財務省がY氏、外務省はT氏、そして経産省がK氏とみる。はてさて、戦後最年少、44歳の首相が我が国に本当に実現する!感慨深いものがある。