『読売新聞』(10月26日付朝刊)1面左肩の日曜日特集「地球を読む」に細谷雄一慶応大学教授が「高市新首相,『サッチャー』になれるか」を寄稿している。確かに,高市早苗首相はこれまでマーガレット・サッチャー第71代英国首相を「目標とする政治家」と公言してきた。高市が10月4日の自民党総裁選に勝利後,小誌編集長は各種メディアで,11年208日の長期政権を誇ったサッチャー(1979年5月4日~90年11月28日)に対し,英史上3人目の女性首相リズ・トラスが僅か49日間(2022年9月6日~10月25日)の短命に終わった史実を引き合いに高市短命政権の可能性を示唆した。だが,修正する。21日に発表された高市官邸の陣立てと閣僚人事(翌日の副大臣と政務官を含む)を吟味すると,予想以上によく錬られた陣容であることが分かる。
要は,結構持ち堪える政権になるということだ。サッチャーとトラスとの比較ではなく,むしろ英国2人目の女性首相テリーザ・メイ首相(17年7月13日~19年7月24日)に近いと言うべきかもしれない。それは措いて,高市が憧れるサッチャーの新自由主義的な経済改革「サッチャリズム」は国有インフラ企業の民営化と規制緩和・金融システム改革を進め,一方で所得税・法人税の増税だけでなく,就任早々付加価値税(消費税)の税率引き上げも断行した。しかし長期政権半ばに失業率の急増に苦しみ「小さな政府」路線の修正を余儀なくされてリフレ政策に転じた。▶︎
▶︎そして経済再生と保守回帰を主導した。高市はこのサッチャリズムの修正に目を付けたようだ。それは高市人事に見て取れる。所信表明演説の翌日,高市は18人の閣僚に「指示書」を出した。その中の片山さつき財務相宛ての10項目指示の1番目に<「責任ある積極財政」の考え方に基づく経済・財政運営を行う>と記されている。平たく言えば,積極財政派を首相官邸,内閣,自民党執行部の要路に重用している。
かつて自民党内に設置された2つの組織を精査した。①「財政政策検討本部」(本部長・西田昌司参院議員=当選4回・旧安倍派)の幹事長:城内実(衆院7回・旧森山派)→経済財政担当相,事務局長:中村裕之(5回・麻生派)→文部科学副大臣,最高顧問:安倍晋三元首相(10回),顧問:高市早苗(10回・無派閥)→首相,古屋圭司(12回・無派閥)→自民党選対委員長,萩生田光一(7回・旧安倍派)→幹事長代行,世耕弘成(衆院1回,参院5回・旧安倍派),メンバー:片山さつき(参院3回,衆院1回・旧安倍派)→財務相,佐藤啓(参院2回・旧安倍派)→官房副長官…(以下は本誌掲載)申込はこちら
