高市早苗首相がドナルド・トランプ米大統領と東京・元赤坂の迎賓館で会談した10月28日の夕方,小野田紀美経済安全保障相(特命・担当事項:科学技術政策・宇宙政策・人工知能戦略)は永田町の首相官邸から道路を隔てた真向かいの内閣府で,米ホワイトハウス(WH)科学技術政策局(OSTP)のマイケル・クラツィオス局長兼大統領上級顧問と会談した。両者は科学技術における人工知能(AI)の活用に注力し,日米間でAI分野での国際連携の強化を確認した。
そして日米科学技術協力覚書に調印。第1次トランプ政権時に国防総省(ペンタゴン)の技術研究担当副次官兼WHCTO(最高技術責任者)であったクラツィオスは昨年12月のクリスマス前に早くもトランプからOSTP局長に指名されていた。それだけこの分野で信任が厚いということだ。と同時に,WHにあってはJ.D.バンス副大統領を筆頭にこのクラツィオス以下,スティーブン・ミラー大統領次席補佐官(政策担当),スリラム・クリシュナン大統領上級顧問(AI政策担当),スコット・クポー人事管理局(OPM)局長らは,本誌既報のように保守思想家のカーティス・ヤーヴィンから強い影響を受けていることで知られる。トランプが7月23日に発表した「AI行動計画」に次のような記述がある。▶︎
▶︎<米国はAIイノベーションのグローバル統治を拒否し,日米のように2国間協定を志向する>。まさにトランプの“マルチ(多国間)嫌い,バイ(2国間)好み”を地で行っている。とはいえ,そこまで進んだのはオンラインで事前折衝が繰り返し行われていたからだ。米側がクラツィオスその人であり,日本側は福永哲郎内閣府科学技術・イノベーション推進事務局統括官である。経済産業省の前貿易経済安全保障局長の福永は初代局長だ。経産省を俯瞰すると,出向先の日本貿易振興機構(JETRO)「産業調査員」(通称,「産調」)という役職に気づく。中でも「ニューヨークJETRO産調」と「ブリュッセルJETRO事務所長」が花形ポストだ。ニューヨーク:嶋田隆元岸田文雄首相首席秘書官(元事務次官・82年旧通産省),荒井勝喜通商政策局長(91年),香山弘文首相事務秘書官(95年),奥家敏和商務情報政策局審議官(同)。ブリュッセル:今井尚哉元安倍晋三首相補佐官兼政務秘書官(82年),福永内閣府統括官(91年),井上博雄商務情報政策局政策統括調整官(石破茂前首相事務秘書官・94年),佐伯耕三JETRO事務所長(元安倍首相事務秘書官・98年)…(以下は本誌掲載)申込はこちら
