高市早苗首相が,果たして強い信念を抱き現下の厳しい困難を突破するに足る器量と自信を有する政治家なのか,それとも数多ある諸難題に立ち向かうべくネーションリーダーとしては危うい存在なのか,判定を下すには早計に失する。
先ずは前者から。後講釈と言われそうだが,高市の政治キャリアの中で,第1次安倍晋三内閣で初入閣の内閣府特命担当相(科学技術政策。2006年9月~07年8月)が極めて重要な意味を持つ。同ポストに第2次岸田文雄第1次及び第2次改造内閣でも就いた(22年8月~24年10月)。高市と言えば,第2次安倍以降の第18・19・23代大臣を延べ4年間3期にわたり務めているので「高市総務相」のイメージが圧倒的に強い。事実,政権発足時に霞が関のごく一部で「高市・総務省4人組」(黒田武一郎宮内庁次長・元総務事務次官,原邦彰総務事務次官,松田浩樹内閣府審議官,大沢博消防庁長官)の存在が取り沙汰された。4人の共通項は第3時安倍内閣の高市総務相下の佐藤文俊事務次官・黒田自治財政局長・原同局調整課長・大沢同局交付税課長・松田自治行政局地域政策課長であり,旧自治省の「四羽烏」とされた。
こうした「高市+○省人脈」で言えば,現在では「高市・経産省DNA」が指摘される。小誌編集長が「科学技術」関連で書いているように,11月28日夕に官邸で開かれた第80回総合科学技術・イノベーション会議(CSTI。議長・高市首相)を看過すべきではない。高市が高く掲げる「新技術立国」は,その旗を新たな国家運営の中核へと引き上げる政策大転換の雄叫びである。10月24日の所信表明演説で「強い経済の基盤となるのは優れた科学技術力であり,イノベーションを興すことのできる人材です。科学技術・人材育成に資する戦略的支援を行い,『新技術立国』を目指します」と述べている。▶︎
▶︎日米首脳会談(10月28日)が設定されるかなり前から経済産業省は準備していた。前貿易経済安全保障局長の福永哲郎現内閣府科学技術・イノベーション推進事務局統括官が米ホワイトハウス科学技術政策局(OSTP)のマイケル・クラツィオス局長と水面下で接触し,高市・トランプ会談同日夕に内閣府で小野田紀美(科学技術政策担当相)・クラツィオス会談を実現した。同省はCSTI開催前にイノベーション・環境局研究開発課が『研究開発税制について』と題した小冊子を作成している。
そこには,耳目が集まる「国家戦略技術」として①人工知能(AI)・先端ロボット,②量子,③半導体・通信,④バイオ・ヘルスケア,⑤核融合,⑥宇宙の6分野が指定され,研究予算の配分や税制上の優遇措置を重点的に支援されると記述。高市が繰り返す「日本成長戦略」のコアには「科技計画」がある。21年9月総裁選時,高市は既にエネルギー安保の観点から小型モジュール原子炉(SMR)の地下立地と30年代に向けて核融合炉開発を公約に挙げた。旧くは11年5月に自身のホームページに主人・山本拓衆院議員(当時・現在は要介護)が「地下式原発推進議連」を発足させると書いた。息長く,しかもトコトンやる。それが高市流だ…(以下は本誌掲載)申込はこちら
