注目の第51回衆院選(1月27日公示・2月8日投開票)は、断トツの「高市(早苗首相)人気」もあって自民党の独り勝ちで幕を閉じることになる。1月12日午前、世上で「元宿(仁・自民党本部事務総長)調査」と称される情勢調査の結果が流布して永田町関係者に衝撃が走った。そこには、「自民199→260、維新34→38、国民27→35、参政党3→17、立憲148→70、公明24→18、れいわ9→7、共産8→5、日本保守党3→5」と記述されていた。 後にこの「元宿調査」は年明けの1月4~8日に実施した自民党情勢調査であるとされたが、自民260が265、維新38が37など事実とは少々異なる数字が散見された。選挙予想の専門家の殆どが「あり得ない数字だ」と一笑に付した。その後の16日に旧立憲民主、公明両党が合流して、新党・中道改革連合(中道)が誕生したこともあり、調査時期がそのプロセスに重なる旧立憲の「70」は疑問視される。そして焦点は、総動員態勢を発出した旧公明の支持母体・創価学会の組織票の行方となった。
それを措いても、自民党調査(1月21~25日実施)は自民242(小選挙区177、比例代表65)、維新37(選挙区21、比例16)、中道131(選挙区79、比例52)となり、続く同28~2月1日実施調査では自民257(選挙区189、比例68)、維新34(選挙区19、比例15)、中道119(選挙区70、比例49)と、日を追うごとに「自民圧勝」ムードが加速するだけだった。その間に吃驚仰天の朝日新聞世論調査(1月31~2月1日実施)があった。朝日新聞(2日付朝刊)は1面トップに「自維 300議席超うかがう―中道ふるわず半減も、衆院選中盤情勢調査―国民横ばい 参政・みらい勢い」の見出しを掲げて大きく報じた。この「朝日調査」(自民278~292~306、維新25~32~38、中道60~74~87)が決定打となった。ほぼ同時期に行った自民最新調査の自民257(中心値)+維新34(同)=291議席は、上振れすれば衆院定数の3分の2(310議席)を上回る可能性を示唆する驚愕の数字である。一方で、公示前172の中道は前回調査131から119に減少した。中道の旧立憲系は敗戦ムード著しく、早くも野田佳彦代表引責辞任後、どうするのかが話題となっている。
他方、旧公明・学会はまだ意気軒高で、残る数日で自力を発揮して小選挙区で「結果」をみせる構えだ。「衆議院選挙の世論調査について」と題された自民党調査報告には、何とこう記述されている。<今回の調査で自民党の勢いは維持しているものと考えられますが、報道されているように創価学会が108の重点区を決めて、より強化した活動を展開していくことや、朝日新聞の報道による揺れ戻しなど、自民党の勢いに今後マイナスの影響を与えると考えられますので、より一層の引き締めを図り、手を緩めることなく、全力をあげて取り組むことが重要かと思われます> 語るに落ちる、とまでは言わない。だが、当初は危ぶまれていた今総選挙は「高市人気」に便乗して自民の独り勝ちとなる。一時は鈴木俊一幹事長だけでなく、昨年秋の総裁選勝利で貢献した麻生太郎副総裁も高市氏の通常国会召集冒頭での衆院解散意向を読売新聞(1月10日付)のスクープで知ったと不満を隠さなかったが、今や党執行部を筆頭に当選が確実視される24年総選挙落選者は「神様、仏様、高市様」と首を垂れるありさまだ。
さて、問題は選挙後の高市氏である。高市官邸の実情に詳しい永田町関係者によれば、孤高の人、高市首相が消費税減税の財源問題など主要政策から政権運営を含む政局まで心を許して相談する相手が殆どいないという。▶︎
▶︎霞が関・永田町に通暁する人物が挙げる固有名詞は、国会議員で木原稔官房長官、尾崎正直、佐藤啓両官房副長官(政務)の3人、非議員が今井尚哉内閣官房参与(元安倍晋三首相政務秘書官兼首相補佐官)、佐伯耕三内閣広報官(元安倍首相事務秘書官・スピーチライター)、そして飯田祐二首相政務秘書官(前経済産業事務次官)の3人である。奇しくも今井(1982年旧通産省)、飯田(88年)、佐伯(98年)の3氏は経産省OBだ。7年8カ月に及んだ安倍長期政権最大の貢献者とされる今井氏だが、同氏が首相に助言するのは外交と政局に限定されている。その今井氏が、昨秋の首相答弁「台湾有事は存立危機事態」が習近平国家主席の逆鱗に触れて、その後の対日「戦狼外交」を誘発したことを憂慮、早期の対中関係修復を助言したものの、高市氏に却下されている。
そうした一徹さが高市氏の真骨頂という評価がある一方で、繊細な外交にあっては柔軟さに欠けるとの批判もある。そこで懸念されるのは、早ければ3月中旬にも予定される首相の訪米であり、ドナルド・トランプ大統領との日米首脳会談で何を話すのか、である。
今週初めワシントンから来られた米政治の裏面に精通する方の解説を聞く機会を得た。先ずは概論から。権力の構図は、トランプ大統領を頂点とするパワー・トライアングルの両底辺の一方にJ・D・バンス副大統領、ドナルド・“ドン”・トランプJr、スティーブン・ミラー大統領次席補佐官(政策担当)、もう一方にマルコ・ルビオ国務長官、スコット・ベッセント財務長官、スーザン・ワイルズ大統領首席補佐官が位置する。分かりやすい事例で両勢力を説明する。それぞれのケースの主人公はもちろん、トランプ氏その人である。ベネズエラへの軍事侵攻は、近い将来の標的にキューバを見据えるルビオ氏が中心となって計画されたもの。そしてグリーンランド領有を進言する中核メンバーは「力の支配」信奉者のミラー氏である。解説して頂いた方の見立てでは、これまでトランプ氏は前者の立ち位置にいたが、相次ぐ国際情勢の激変から4月の中国国賓訪問が当面の結節点との認識を持つに至り、ルビオ=ベッセント・コンビに傾倒しつつあるというのである。後者の特色はグローバル派であり、対中強硬派であることだ。
なぜ、ここが問題点となるのか。高市氏の確たる対中強硬スタンスがすんなりとルビオ=ベッセント・ラインに受け入れられるということはない。取り分け、ベッセント氏は米中貿易交渉や重要鉱物資源(レアアース)問題で「トランプ氏のディールで成果を獲得した」という打ち出しのために、高市・自民党を「出汁にする」ことなど平気の平左である。 高市さん、ここは是非とも「勝って兜の緒を締めよ」でお願いしたい。
