9月29日21時〜22時半(米国東部標準時間・日本時間30日午前10時〜11時半)、共和、民主両党の米大統領候補による第1回テレビ討論会が、オハイオ州クリーブランドで開かれる。
ドナルド・トランプ大統領再選、それともジョー・バイデン前副大統領勝利のいずれかを占う上で最も重要なイベントだ。
第2回が10月15日にフロリダ州マイアミ、第3回は同22日にテネシー州ナッシュビルで開催されるが、全米テレビ中継である。
2016年のヒラリー・クリントンvsトランプの第1回討論会の視聴者数は過去最高の8400万人で、米国人が熱狂する全米フットボールリーグ(NFL)の王者を決めるスーパーボウルの視聴者数9900万人(今年2月)に肉薄するほどだった。
では、討論会がどれほど有権者の投票行動に影響を与えるのか。
選挙後のニールセン社調査によると概ね60〜70%程度の有権者が、投票するに当たって討論会を参考にしたと回答している。
一方で、大統領候補を正式決定する共和、民主両党大会前後に投票先を決めている有権者は64%に達し、その殆どがテレビ討論会前に決めていたことになる。▶︎
▶︎ところが、今回は様相が変わった。ウィスコンシン、ミシガン、ペンシルベニア、フロリダ、テキサス州など両候補の支持率が拮抗しており、討論会の「勝敗」が11月3日の大統領選を大きく左右することになる。
この間の米中技術覇権を巡る抗争の激化の中で、トランプ大統領は「バイデン民主党=中国に弱腰、バイデン大統領=中国の思うツボ」という図式を作ろうとしている。
と同時にトランプ氏は、テレビ討論会でバイデン氏に対する否定的な意識を高めることで、ある種の「不美人コンテスト」に持ち込む戦略である。
曰く、白人警官の黒人男性暴行死事件を契機とした「ブラック・ライブズ・マター(BLM=黒人の命は大切だ)」運動支持のバイデン氏は左派の暴動誘発を容認する弱い指導者である。
曰く、バイデン氏が「大統領選はスクラントン(出身地の労働者の街)対パークアベニュー(ニューヨークの富裕層地)の戦い」と述べたことを、「米国を裏切った」と断じた。なぜか。トランプタワーはパークアベニューではなく5番街であり、以ってバイデン氏は「認知症」である。
バイデン氏が討論会でトランプ氏の凄まじい口撃から自らを守れるのかどうか、この一点に尽きる。