永田町ウォッチャーの中で,菅義偉首相が9月16日に首相補佐官に任命するまで阿達雅志参院議員(当選2回)に注目していた者は殆どいなかった。
阿達の岳父が佐藤信二元衆院議員(通産相,運輸相を歴任。佐藤栄作元首相の次男)であることは承知していても,2007年と10年参院選に自民党公認で比例区から立候補するも共に次々点で落選,14年12月に参院比例代表に繰り上げ当選できた無派閥議員の一人と見なすぐらいだったからだ。
首相補佐官人事については,10月1日に辞令交付された元共同通信論説副委員長の柿崎明二首相補佐官に永田町と霞が関の耳目が集まった。だが,阿達のキャリアを精査すれば,菅が外交・経済政策担当首相秘書官に起用した意図は理解できる。これまで外務省も密かに阿達の海外に張り巡らせたアンテナ,特に米国人脈に注視していたようだが,その実態は公正に評価すればレベルはかなり高い。
先ずはキャリアである。▶︎
▶︎1959年9月京都生まれの61歳。東大法学部卒業後の1983年,住友商事に入社。同社では車輌鋳鍛貿易部に所属し,米国向け鉄道車両の輸出に従事,91~93年にニューヨーク大学ロースクールに留学し,法学修士を取得(NY州弁護士資格も得た)。
帰国後,同社法務部に配属されて96年から同社中国総代表室副代表(北京駐在),法務部課長を歴任,2000年8月に退社。そして翌月,佐藤信二事務所入りする(03年11月公設秘書)。
その間に興味深いキャリアがある。弁護士大国の米国でも,歴史と人材で傑出したニューヨークの戦前からの名門ポール・ワイス・リフキンド・ワートン・ギャリソン外国法事務弁護士事務所の東京オフィス顧問を04~14年まで議員秘書の傍ら10年間務めているのだ。それだけではない。13年1月に米シンクタンク戦略国際問題研究所(CSIS)から「CASE STUDY : China South Locomotive and Rolling Stock Corporation(CSR)」という英文の報告書(A4版24枚)を刊行している…(以下は本誌掲載)申込はこちら