自民党の二階俊博幹事長率いる志帥会(二階派)が権勢を誇っている。
菅義偉首相(党総裁)誕生の最大の功労者を自負する二階氏には「菅・二階連立政権」との想いがあるはずだ。 その自負は自民党役員人事に端的に表れている。
最側近の林幹雄幹事長代理(兼選対委員長代理)、山口壮筆頭副幹事長、江崎鐵磨総務会長代理、片山さつき同、吉川貴盛選対委員長代行、桜田義孝組織運動本部長代理、福井照経理局長、小泉龍司国際局長――。
二階幹事長を頂点に、党内各組織の要路を席捲している。まさに二階派オンパレードである。
安倍晋三前首相出身の最大派閥・清和会(細田派)、第2派閥の志公会(麻生派)、第3派閥の平成研究会(竹下派)から「やり過ぎだ」との声が上がる。 政治家は嫉妬の海に浸かっている。一朝菅政権有事のときは、不満分子は牙を剥けかねないほど怨嗟の声は大きい。 そうした中で、二階派は水面下で何と外交・金融政策に関わる動きを見せている。
6月17日、「日本・マカオ大湾区(ベイエリア)友好議員連盟」が発足した。会長・河村建夫元官房長官、副会長・伊東良孝前農林水産副大臣、事務局長・大岡敏孝元財務大臣政務官、事務局長代理・宮内秀樹農水副大臣、最高顧問・二階氏、特別顧問・片山氏。これまたオール二階派である。▶︎
▶︎この議連設立には、もちろん理由がある。中国の香港自治への直接介入によって同地の国際金融ハブ機能が不安視された6月のことだ。麻生太郎財務相は国際協力銀行(JBIC)に協力を求めて金融当局に香港の金融機能の日本誘致を指示した。
その後、内閣官房に事務局が設置され、財務省出身の藤井健志官房副長官補・寺岡光博内閣審議官ライン主導のチームが始動した。誘致候補は大阪と福岡である。
まさに軌を一にして先の議連が誕生した。
財務省OGで嗅覚鋭い片山氏が水面下の動きを察知してのことだった。 菅政権発足直後の9月21日、賀一誠マカオ行政長官と河村議連会長はビデオ会議に臨んだ。 「マカオ新聞」(22日付電子版)は日本、マカオ双方から議連メンバーと特別行政区幹部が同席し、マカオ大湾区開発の推進で一致したと報道。 筆者が注目するのは、この構想の裏に秘められた中国の意図である。近い将来、香港が国際金融都市機能を失った時の代替地に想定しているのだ。それは「大阪・福岡・マカオ三角構想」でもある。