どう考えても得心いかないことがある。
それは、安倍晋三首相(当時)が主催した「桜を見る会」(2019年4月13日に新宿御苑で開催)の前日に安倍氏地元の後援会が都内のホテルで開いた前夜祭(夕食会)の費用の一部を安倍氏側が負担していたとの報道である。 読売新聞(11月23日付朝刊)が一面左肩で「安倍前首相秘書ら聴取、東京地検―『桜』前夜祭会費補填巡り」の見出しを掲げて報じた。
山口県下関市の「安倍晋三後援会」が2013~19年まで「桜を見る会」前日の前夜祭総費用が参加者会費だけでは足りず、その差額を安倍氏の国会事務所が補填していた疑いがあり、東京地検特捜部が公設第1秘書などから任意で聴取したというのである。同日のNHKもホテル側が作成した安倍氏の資金管理団体宛の領収書のコピーなどを映して見せるなど大きく報道した。当然、他メディアも追い、「事務所側が補填した事実は全くない」とした安倍氏の答弁と矛盾する、政治資金規正法違反や公職選挙法違反の容疑があるとして追及の構えだ。
この「900万円超補填か」報道の詰め=真相追及は野党やメディアに任せるとして、筆者の関心はなぜ、今なのかである。 折しも彼の米国ではドナルド・トランプ大統領からジョー・バイデン次期大統領への政権移行の只中にある。来年1月20日にはバイデン政権が誕生する。▶︎
▶︎一方、同盟関係にある我が方は9月16日に菅義偉政権が誕生した。こちらは安倍氏から菅氏へ波乱・混乱なく政権移行が実現した。 だが、トランプ氏と盟友関係だった安倍氏退場は、日米新時代の幕開けの象徴とすると、今後、司直の手が安倍事務所に及ぶ「事件」と見ることが出来る。
米大統領選終盤に話題となった超保守派の陰謀論グループ「Qアノン」ではないが、筆者はどうしても新たな権力者となった菅義偉首相の「意向」を忖度した検察当局の方針ではないかと勘繰ってしまうのだ。その「意向」はもちろん、明らかに菅氏が長期政権を目指しており、そしてその可能性が、現下の政治情勢からも十分に窺える。
筆者はこの間、来年1月上中旬の衆院解散・総選挙との見立てだったが、どうやら菅氏は東京五輪後の衆院解散を視野に入れた安全運転に切り替えたフシが濃厚である。よもや将来の「安倍後継」の芽を摘んでおこうということなのか。考えすぎかもしれない。