12月28日付 バイデン氏は初めから「弱い大統領」ー政権維持と議会運営を天秤

 ジョー・バイデン次期米大統領は1月20日の大統領就任式を前に早くも厳しい判断を迫られている。議会対応である。 
 米議会上下院は12月21日、共和、民主両党が新型コロナウイルスの急拡大を受けた追加経済対策9000億㌦(約93兆円)に賛成、成立した。バイデン氏は前日、「私の政権はコロナ危機前よりも良い経済を取り戻すための追加措置に着手する準備がある」と言明した。しかし、事はそれほど容易ではない。なぜか。 
 来年1月5日に実施される南部ジョージア州上院2議席の決選投票で上院の多数派が決定する。 米メディアは共和、民主両党が各々1議席を獲得、上院は共和51議席、民主49議席となるとの予想でほぼ一致している。  
 議会動向に詳しい米誌「Observatory View」によると、実はドナルド・トランプ大統領のこの間の現地入りが奏功し、共和党が2議席を獲得する勢いであり、52対48の現有勢力を維持する可能性が高いというのである。 
 バイデン氏は第117回米議会(会期:21年1月3日~23年1月3日)を控えて、民主党政権が目指す再追加経済対策で多数派の共和党に譲歩を余儀なくされるのだ。 ▶︎

▶︎成立した追加経済対策は概ね以下の通り。①企業向け融資の給与保護プログラム、②各種失業保険プログラムの11週間延長、③学校再開を奨励するための資金、④パンデミックに直接対処するための資金―などだ。 もちろん、世帯年収7万5千㌦を上限に成人1人当たり600㌦、扶養児童1人当たり600㌦の現金一律給付が含まれる。 
 だが、バイデン氏はこの経済対策を「頭金」として捉えており、新議会に州・地方政府向けの財政支援を盛り込んだ2兆㌦(約207兆円)の超大型経済対策提出を検討している。 
 バイデン氏と同じく上院議員を永く務める共和党ナンバー1のミッチ・マコネル院内総務もさすがに巨額の財政出動には強く抵抗している。 共和党からすれば、州・地方政府への巨額の財政支援は民主党色が強い「大きな政府」の救済に映る。再来年11月の中間選挙を視野に入れると、政権党とは非妥協路線で臨むことが選挙戦略上、不可欠である。 
 元来、民主党中道派のバイデン氏は共和党と協力してワシントンを機能させたいと願っているが、党内左派が強くブレーキをかけている。 すなわち、政権維持と議会運営を天秤にかける手法であるバイデン氏は端から「弱い大統領」ということになる。