ジョー・バイデン次期米大統領の政権移行チームは1月13日、米国家安全保障会議(NSC)に新たに設置するインド太平洋調整官(兼大統領副補佐官)にカート・キャンベル元国務次官補(東アジア・太平洋担当)を起用すると発表した。
カート・キャンベル氏(64歳)。カリフォルニア大学(サンディエゴ校)卒業後、英オックスフォード大学で博士号(国際関係論)を取得。その後、米海軍作戦部長特別諜報部隊を経てハーバード大学ケネディスクール準教授等を歴任し、クリントン民主党政権の国防次官補代理(アジア太平洋担当)、09年6月にオバマ政権の国務次官補に就任。
その間、07年1月にはバイデン政権の国防長官候補に挙げられたミシェル・フロノイ元国防次官補とともにシンクタンク・新アメリカ安全保障センター(CNAS)を設立、さらにコンサルタント会社アジア・グループをシンガポールに立ち上げるなど、その旺盛な「ビジネス・マインド」も注目された。夫人は、同じオバマ政権のラエル・ブレイナード元財務次官(国際担当)。 わが国の報道では、アジア政策を統括するインド太平洋調整官にキャンベル氏を起用するのはバイデン次期政権が日米同盟を含むアジア政策を重視する証との論調が過半である。 ▶︎
▶︎確かに、キャンベル氏は日本にも政治家を含め知人が多くアジア通である。先のCNAS代表だけではなく有名な戦略国際問題研究所(CSIS)の上級副所長も歴任したので共和党のマイケル・グリーン・ジョージタウン大学教授(CSIS上級副所長)共々、米国専門家や藤崎一郎元駐米大使など外務官僚にも知己が多い。 民主党ではハーバード大学のジョセフ・ナイ教授と並び称される「親日派・知日派」である。
グリーン氏は「ニューズウィーク」(日本版・1月14日付)で「(キャンベル氏は)早い段階から中国の覇権拡大を警戒し、同盟国や友好国と連携して、その動きを封じる戦略を提唱していた」と書いている。 民主党政権誕生で米国の対中政策が融和路線に転じるのではないかと不安視する向きが少なくない中で、頼もしい言及である。
ただ一点だけ指摘する。飽くまでも情報ベースだが、件のアジア・グループが、米カジノ大手ウィン・リゾーツが推進した横浜進出を裏面で支援していたというのである。そして、官房長官時代の菅義偉首相に協力を要請したとされるが、真相のほどは分からない。