共同通信社の最新世論調査(6月19~20日実施)の結果を見ると,菅義偉内閣支持率の下落が底を打った感が強い。内閣支持率は前回比2.9ポイント増の44.0%,不支持率が同5.1P減の42.2%となり,支持,不支持が再々逆転した(11~13日実施のNHK調査は支持率が2P増の37%,不支持率は2P増の45%)。一方,7月23日開催予定の東京五輪・パラリンピックについて,「観客数を制限して開催」は前回比14.6P増の27.2%,「無観客で開催」が同15.1P増の40.3%,「中止すべき」は同28.9P減の30.8%である。条件付き開催賛成が約67%に達した。
「コロナ退治」に難渋した菅首相は年初から4月半ば頃まで眠れぬ夜が続いたとされるが,ここに来て安眠できるようになったに違いない。昨年9月,思わぬアクシデントに見舞われて急遽マウンドを降りた安倍晋三前首相に代わって登板した菅には,無死満塁で満を持してのリリーフエースの強い自覚があったはずだ。
その立ち上がりは,いきなり「携帯電話料金引き下げ」と「不妊治療の保険適用」という豪速球で2者連続三振に討ち取り,チーム全員の期待に応えた。だが,残るはあと1人までいったものの,自軍野手のエラーや自らが乱調を来し四球乱発の挙句,長打まで浴びてしまった。▶︎
▶︎「夜の銀座」,「女性蔑視発言」,「長男の接待」などである。そこへ新型コロナウイルス対策全てが後手に回るという予想外の長打を浴びてノックアウト寸前となったのだ。捕手の投球サインに従わず,ピッチングコーチの助言も断る投手である菅は自らが試合運びまで決めるプレイングマネジャーなのだ。そのツケが回って来たのだ。
しかし「ワクチン接種」と「東京五輪開催」という“魔球”に賭けた菅の判断は奏功しつつあるようだ。その魔球を披露する前に決め球で見せ場を作ったのが,4月16日の日米首脳会談と6月11~13日の主要7カ国首脳会議(G7英コーンウォール・サミット)だった。
苦手とされた外交・安全保障政策で思わぬ得点を稼いだのである。取り分け,日米主導でG7首脳宣言に「台湾海峡の平和と安定の重要性を強調し,両岸の平和的解決を促す」と「我々は東京五輪・パラリンピック開催支持を再度表明する」を盛り込んだことが大きかった。試合は同点延長戦になったものの,打順が回り自らクリーンヒットを打って勝ち越し,再び勝機を引き寄せたようなものである…(以下は本誌掲載)申込はこちら