7月20日付朝刊の新聞各紙の見出しは、珍しく一致した。「日米欧、中国を一斉非難―MSソフト『サイバー攻撃』と結論」(産経新聞)、「サイバー攻撃、中国を非難―米英など声明 日本も支持」(朝日新聞)、「中国サイバー攻撃非難―米、日欧と声明 対抗措置示唆」(読売新聞)。 各紙報道を要約すると、以下のような事である。
中国政府(国家安全保障省)が関与したとされるサイバー攻撃は、3月に発覚した米マイクロソフトの企業向け電子メールソフトに対する攻撃が典型である。 中国政府につながるハッカー集団がランサムウェア(身代金要求型ウイルス)などで攻撃を行い、日米欧で経済活動の脅威となっている(NECの防衛関連ファイルが不正アクセスされた)。
こうした中国のサイバー攻撃に対処するため、バイデン米政権は19日、ハッカー集団の手口を公表するだけでなく具体的対抗措置を取るとの声明を発表した。 では、誰がどの組織・機関を主導して具体的な対抗措置を打ち出すのかである。残念ながら、新聞報道にその言及はない。「バイデン政権7人の侍」と名付けた経済安全保障政策のプロがいる。その中でも際立つ3人が、中国への対抗措置を決定するキーパーソンである。▶︎
▶︎①デビッド・コーエン米中央情報局(CIA)副長官、②ダリープ・シン米国家安全保障会議(NSC)大統領次席補佐官、③タラン・チャブラNSC技術・安全保障担当上級部長だ。
先ず、オバマ政権時の財務次官(金融テロ担当)として「金融制裁のグル」と呼ばれたコーエン氏。カウンターインテリジェンスの責任者として、NSC、財務省、FBIと協力してサイバー攻撃を取り締まる。 次のシン氏もオバマ政権下で財務次官補(国際金融犯罪・サイバー犯罪担当)を歴任した。現在は、米中対立の先鋭化が進む中で対中金融制裁の責任者とされる。3人目のチャブラ氏は、6月初旬に米上院が賛成多数で可決した「米国イノベーション・競争法」の策定を始め、中国との技術覇権競争で注目を集めたECRA(輸出管理改革法)の執行などにも関与している。
経済産業省の経済安全保障政策部局がマークしている人物だ。 上述の3人以外にNSCのL・ローゼンバーガー中国担当、E・ケーガン東アジア大洋州担当の両上級部長もキーマンである。今後の展開如何で対中制裁として、米㌦と香港㌦交換の「ドルペック制度」の停止もあり得る。