9月19日付「自民党総裁選、先行河野氏実利主義的対応で支持者離反もー岸田氏決選投票で差すか」

9月17日、自民党次期総裁選スタートの号砲が鳴った――。勢いよく飛び出した河野太郎規制改革相(衆院当選8回・麻生派=58歳)が早くも一馬身リードしている。追走する岸田文雄前政調会長(9回・岸田派=64歳)は最後の直線で追い込み抜き去ることに賭けているかに見える。高市早苗前総務相(8回・無派閥=60歳)は観客席に応援団が少ないこともあって出遅れ感が否めないが、瞬発力がある脚質に期待がかかる。
 ゲートインが遅れた野田聖子幹事長代行(9回・無派閥=61歳)は騎手、調教師らがそろわずスタート序盤から不利な展開だが、馬主が大立者だ。競馬場のコンディションは良好であるが、河野、岸田、高市、野田の各馬とも未走コースのため走りながらブリンカー(遮眼革)越しに前後左右を窺っている――総裁選の現状を競馬に例えると概ねこうなる。最初に出馬表明した岸田氏は自らが派閥の領袖でもあり、総裁選挙対策本部を東京・永田町の全国町村会館内の宏池会事務所に設置した。後に裏選対本部を東京・紀尾井町のホテルニューオータニに設けた。
 興味深いのは、河野、高市両氏の選対本部である。東京・永田町のザ・キャピトルホテル東急に両陣営ともに選対本部を置いている。河野氏は同ホテル5階のオフィス棟、そして高市氏は29階のスイートルームを充てた。▶︎ 

▶︎厳密に言えば、高市氏のそれは「裏」であり、「表」は赤坂2丁目のオフィスビル7階にある。総裁選の争点である女系・女性天皇、核燃料サイクルの是非で真っ向から対立する河野、高市両氏が同じホテルというのが面白い。
 では、肝心な重賞レースの勝敗の行方である。ハッキリと言えることは、河野氏が1回目投票で国会議員票と地方票の合計766票の単純過半数(384票)を獲れなければ、決選投票の仕組みや党内力学から、岸田氏が差し切る可能性が俄かに高まったということだ。党員・党友票の地方票は事実上の「人気投票」である。世論調査・メディア報道に強く影響を受けるからだ。
 選挙地盤が脆弱な若手議員は「選挙の顔」を求めるし、世論に弱い。それ故に河野氏が先頭を走っている。だが、10日の出馬会見で原発再稼働を容認したかと思えば、15日のテレビ番組では原発建て替えを否定した。こうした河野氏の実利主義的な対応が「改革派」と崇めてきた支持者の離反を招くのか、これがレースの勝敗を決める。