9月27日付 「バイデン氏同盟国『最優先』発言に疑問ー国連演説「アフガン撤退』『対中姿勢』説明十分か」

ジョー・バイデン米大統領は9月21日午前(日本時間21日夜)、国連総会で演説した。筆者は、バイデン発言の「私は同盟関係の再構築を最優先課題に掲げてきた」を額面通りに受け止めていない。まず指摘すべきは、①アフガニスタンからの米軍撤退問題である。首都カブール陥落をめぐる大混乱を想起すべきだ。まさに同盟国からの性急な撤退反対の声に耳を貸さず、米同時多発テロから20年の節目となる「8月末までの撤退完了」という国内向けアピールに固執したツケが回ったのだ。米中央軍司令官が8月29日に実施した無人機(ドローン)爆撃が子供7人を含む民間人への誤爆だったと謝罪したのに、バイデン氏は国連の場で言及しなかった。 
 ②対中国姿勢のブレが際立っているのは看過できない。確かに、「強国が力で支配するような手法に反対し、我々は同盟国や友好国のために立ち上がる」と語った。だが、バイデン演説では「China」という言葉は一度も使われなかった。気候変動問題で中国との協調の余地を残す意図があるにしても、6月の英コーンウォールG7サミット時の対中強硬発言はどこへ行ったのかと感じたほどだ。日本と米国、オーストラリア、インドによる新しい安全保障の戦略的枠組み「QUAD(クァッド)」による24日の首脳会合を控えながら、事実上の対中戦略である「自由で開かれたインド太平洋構想」の言葉が口の端に乗ったのは1回だけだった。▶︎

▶︎③バイデン氏はQUADを推進しながらも、他方で米国と英国、オーストラリアによる新しい安全保障の枠組み「AUKUS(オーカス)」を創設した。オーストラリアは、フランスと契約した潜水艦の共同開発計画を一方的に破棄して、米国製の攻撃型原潜導入を決めたのだ。
 要は、米英両国の軍需産業助成である。バイデン政権に怒り心頭に発したフランスを欧州連合(EU)は後方支援に回り、対中スタンスで米国と不協和音を生んだ。この地域にはANZUS条約(米豪とニュージーランド3カ国の軍事同盟)もある。米国はテーマによって相手国を変える。そこには日本、インド、ニュージーランドが含まれる。早急なアフガン撤退で信頼を失ったバイデン政権は国内でも難題が相次ぐ。メキシコとの国境周辺で不法移民が急増するなか、さらに政情不安から2万人のハイチ難民が殺到しているのだ。バイデン氏は失墜した信頼回復をカネで解決する、すなわち「援助交際」で対処するつもりのようだ。“嫌らしいオヤジ”にならなければ良いのだが