10月18日付「岸田・甘利実は『経済安保』の発火点ーTSMCの工場誘致成功 中国のデータ独占警戒」

この間、「経済安全保障」という言葉が各メディアを賑わすようになった。岸田文雄内閣鳴り物入りの経済安全保障相に自民党若手の小林鷹之衆院議員(当選3回・二階派)が大抜擢されたことも影響している。岸田政権は年内に経済安全保障戦略を策定する。その発火点となったのは、昨年6月に自民党政務調査会(会長・岸田現首相)に新国際秩序創造戦略本部(座長・甘利明現幹事長)が発足したことだった。
 10月12日に経済安全保障対策本部に名称変更された新国際秩序創造戦略本部は甘利氏主導で結成された。当時から「岸田・甘利合作」であった。そして今年5月には「経済財政運営と改革の基本方針2021」(骨太方針)に向けた提言として5項目の中間取りまとめを発表した。具体的には戦略基盤産業(エネルギー、情報通信、交通・海上物流、金融、医療)についての①戦略的自律性(守り)②戦略的不可欠性(攻め)③技術の保全④技術の育成⑤体制の強化――だ。
 「戦略」と「技術」がキーワードであることは自明である。ここから敷衍してみると、現在の熾烈な米中技術覇権対立の中でバイデン米政権が打ち出す経済安全保障政策にどう立ち向かうのか、の重要性に改めて気づく。ジョー・バイデン大統領は今春、中国との競争を念頭に半導体産業への投資の重要性を訴えた。 ▶︎

▶︎その後、与党民主党内対立によって遅れているが、5.7兆円の半導体関連投資を含む「米国イノベーション競争法案」は6月に米議会上院で可決、成立に向けて下院の承認待ちである。
 その間隙を衝いた経済産業省が水面下で動き、世界最大半導体受託生産会社・台湾積体電路製造(TSMC)とソニーグループの総額8000億円プロジェクトとして22年着工の新工場の熊本県菊陽町誘致が基本合意をみた(政府は4000億円出資)。その4カ月前の6月に閣議決定された「統合イノベーション戦略2021」の中に、実は「先端半導体や電池の技術開発・製造立地推進」と「次世代データセンターの最適地配置推進」が記載されているのだ。
 この「データ」もまたキーワードである。自民党の高市早苗政調会長が12日に発表した「政権公約」の中に次のような記述がある。「権威主義的体制によるデータ独占を阻止するため、自由で信頼あるデータ流通(DFFT)の枠組みを、米欧とともに強力に推進する」。これもまた中国を念頭に置いているのは当然だ。