第49回衆院選は自民党が「絶対安定多数」(261議席)を獲得した。その結果を見届けた岸田文雄首相は11月1日午前、政府専用機で英グラスゴーに向けて羽田空港を出発する。COP26(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議)首脳会合出席のためだが、滞在時間僅か6時間半の0泊2日である。
手前味噌で恐縮だが、筆者は主宰する情報誌インサイドライン(10月25日号)に「選挙結果の如何に関係なく岸田氏は時差8時間を利用する強行日程でCOP26に出席する予定である」と書いた。予兆はあった。衆院選公示5日前の10月14日の「岸田日誌」に目を通すと、以下の記述があったのだ。やや長いが、正確を期するために全文を再録する。
午前8時から21分、新川浩嗣内閣官房気候変動対策推進室長、小野啓一外務省地球規模課題審議官、奈須野太経済産業省産業技術環境局長、保坂伸資源エネルギー庁長官、環境省の中井徳太郎事務次官、小野洋地球環境局長。22分から41分、萩生田光一経産相、多田明弘経産事務次官、資源エネルギー庁の保坂長官、松永明処理水損害対応支援室長。43分から9時、外務省の森健良事務次官、船越健裕アジア大洋州局長。▶︎
▶︎午前8時から同9時までの僅か60分間に3組と面談、各省庁の気候変動問題を所管する局長(級)7人、事務次官3人、大臣1人である。まさに“気候変動オンパレード”である。そしてこの全てに元経済産業事務次官の嶋田隆首相政務秘書官が同席している。嶋田氏もまた同省きってのエネルギー政策通とされた人物だ。この面子を見て「おやおかしいぞ」と感じない政治記者は恐らくいなかったはずである。
そこから筆者は取材を開始した。そしてその1週間後に外務省幹部と話す機会があった。当然ながら、話題は岸田首相の初外遊に及んだ。筆者が、総選挙後の11月第2週に召集される特別国会で公約の「数十兆円規模の補正予算」成立後に訪米、ジョー・バイデン大統領と会談する予定かと尋ねた。 答えは「(訪問時期の)間口を広げるべきです。金曜発ちの1泊3日で十分行けるので早期もある」というものだった。そして得心した。 別れ際にボソッと「個人的には総理にCOP26にも出席して頂きたいと思っているのですが」と言ったのだ。 なるほど、事務方はあらゆる対応策を準備しているのだなと感心したのを覚えている。