第207回臨時国会が閉会した前日の12月20日、東京・永田町の自民党本部7階で政務調査会安全保障調査会(会長・小野寺五典元防衛相)の会合が開かれた。この会合で「国家安全保障戦略、防衛大綱、中期防衛力整備計画の位置づけについて」と題した資料(A4版16枚)と、「在日米軍の駐留経費に係る負担についての実質合意」のタイトルがついた付属資料(同3枚)が配布された。その翌21日、読売新聞(朝刊)2面総合欄に「思いやり予算に『機材費』―日米『年2110億円』合意、自衛隊と共用新設へ」の見出しを掲げた記事があり、読んで驚いた。何故ならば、先の付属資料2枚目の「同盟強靭化予算」(概要)で<●2022年度―2026年度の日本側負担額は、年平均約2110億円(2022年度予算案:約2056億円)>と、「機材費」に言及していたことを思い出したからだ。
そこには、次のように記述されている――。《訓練資機材調達費:在日米軍の即応性のみならず、自衛隊と米軍の相互運用性の向上にも資する訓練資機材の調達に関連する経費を新たに負担。5年間で最大200億円。》 ▶︎
▶︎読売記事のリード《……新たに「訓練資機材調達費」を支出項目に設け、最大で年間200億円を計上することで正式合意した。》は記述とほぼ同じである。しかも但し書き「正式発表まで対外言及をお控えください(発表は12月21日夕刻予定)」があったのだ。作成したのは外務省と防衛省である。件の21日の発表とは、林芳正外相記者会見のことである。筆者も主要省庁が作成する各種資料(その中には稀に「取扱注意」や「厳秘」が含まれる)を入手し、それを基に原稿を書くことがある。だが、言葉遣いを変えても概ね引用する場合、必ず出典を明記する。当然である。
そもそも、この資料冒頭に、岸田文雄首相の所信表明演説「……あらゆる選択肢を排除せず現実的に検討し、スピード感をもって防衛力を抜本的に強化していきます。このために、新たな国家安全保障戦略、防衛大綱、中期防衛力整備計画を、概ね1年をかけて、策定します」と述べた部分を抜粋している。すなわち、戦略→大綱→中期防といった我が国の国家安全保障政策に関する体系を示した資料だ。例えば、喫緊の課題「敵基地攻撃能力」問題などについての言及(引用)であれば良かった、と思う次第である。