3月7日付『プーチンの戦争』でロシア経済は甚大な影響ー日本企業の『天然ガスプロジェクト』にも暗雲

ウクライナ内務省は2月25日午前4時33分(現地時間)、ロシアが首都キエフに対し短距離弾道ミサイル「イスカンデル」と巡航ミサイル「カリブル」攻撃を開始したと発表した。奇しくも岸田文雄政権はその8時間後(日本時間25日午後)、経済安全保障推進法案を閣議決定。 小林鷹之経済安全保障相は記者会見で、「国際情勢が複雑化していく中で、経済構造の自立性を高めていく」と、この法案の意義を強調した。「経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律案」と題された同法案は①重要物資の安定的な供給網の確保②基幹インフラ設備の事前審査③先端技術開発の促進④特許出願の非公開―の4本柱で構成されている。
岸田首相が同日に発表したロシアに対する経済制裁はその①に直接関わる。具体的には半導体などの汎用品輸出である。直前の23日までに米側と擦り合わせていた日本側の国家安全保障局、外務、財務、経済産業省が協議して「ウクライナ情勢をめぐる対露制裁措置」を作成していたのだ。その中に、▼ロシア関係者の入国査証の発給停止及び関係者に対する資産凍結などの措置▼ロシアの3金融機関(開発対外経済銀行VEB、プロムスビヤズバンク、バンクロシヤ)に対する資産凍結▼国際的な合意に基づく規制リスト品目や半導体など汎用品のロシア向け輸出に関する制裁―がある。▶︎

▶︎さらに27日には主要7カ国(G7)と欧州連合(EU)首脳が追加制裁措置で合意した。プーチン大統領を含む政府関係者の資産凍結と、国際銀行間通信協会(SWIFT)からのロシアの銀行排除、露中央銀行の外貨準備への制裁である。
とりわけ、この国際決済網からの排除と露中銀への制裁は通貨(ルーブル)、株価、国債のトリプル暴落を招来、ロシア経済を直撃した。28日にルーブルは前週末比で3割以上の暴落、露中銀は政策金利を9.5%から20%に大幅引き上げを余儀なくされた。金融不安からルーブル安が止まらないのだ。外貨準備6300億㌦(約73兆円)のうちドルとユーロ外貨が5000億㌦分もあり、凍結の対象である。露中銀が米金融機関などとドルを取引するのを禁じる追加制裁が効いた。「プーチンの戦争」によってロシア経済は甚大な影響を受ける。だが、日本企業が巨額資金を投じてロシア側と生産・開発中の北極・ヤマル半島の液化天然ガス(LNG)プロジェクトの先行きに暗雲が立ち込めている。