正直いって,「故安倍晋三国葬儀は9月27日に日本武道館で実施」情報を7月15日午前時点で入手していた。本誌(7月25日号)で報じるべく準備していた。今さら指摘しても詮無いことだが,NHKは20日午前10時21分の速報で国葬儀日程のスクープを放った。因みに岸田文雄首相は参院選翌日の11日,胸中密かに安倍元首相の葬儀を「国民葬」でも「内閣・自民党合同葬」でもなく「国葬儀」で執り行うことを決めていた。
事実,首相側近に対し法的根拠を検証するよう指示している。そして14日の記者会見で国葬儀として行うと発表したのだ。その間に遺族の意向を確認し,会場の日本武道館との日程調整を行っていた。先ずは,国民の間で周知されていない「国葬」と「国葬儀」の違いを説明したい。戦前の国葬は国葬令(1926年10月21日制定・1947年12月31日失効)に基づき実施され,国民全体が服喪した(戦中の43年6月5日実施の山本五十六元帥海軍大将を含む)。だが閣議決定に基づき行われる戦後の国葬儀は,哀悼の意を表するように協力を要望されるだけだ。
従って1967年10月31日に実施された吉田茂元首相の国葬儀では,①各省庁は弔旗を掲揚②各省庁職員は葬儀中の一定時刻に黙禱③公の行事・儀式その他歌舞音曲を伴う行事は差し控える④官公署,学校,会社等においても同様の方法により哀悼を表する――が通達された。▶︎
▶︎戦後2例目の今回は,国葬儀当日が平日の火曜日であり,官公庁や学校を休日にはしない。葬儀費用は吉田元首相時同様に全額国費で負担する(因みに68年5月9日の衆院決算委員会で当時の相沢英之大蔵省主計局次長が総額1809万6000円の内訳として武道館借り上げ費394万2000円,国葬儀場飾り付け経費955万6000円など詳細を答弁している)。叙位叙勲についても,安倍は吉田茂,佐藤栄作,中曽根康弘元首相と同じ従一位,大勲位菊花章頸飾を授与された。
別稿でも触れたように国葬儀の是非については賛否両論あるが,当日は海外から首脳級要人の多数の参列が確実であり,まさに「弔問外交」の場となる。岸田は8月1日にニューヨークの国連本部で開催される核不拡散条約(NPT)再検討会議で日本の首相として初めて演説する。前日31日出発・2日帰国(0泊3日)の強行軍である。「核兵器のない世界」をアピールし,来年5月の主要7カ国首脳会合(G7広島サミット)に繋げる腹積もりだ。続く8月27~28日にチュニジアの首都チュニスで開催される第8回アフリカ開発会議(TICAD)で基調演説する。さらに国葬儀前週の9月21日前後には国連総会で一般討論演説を行う予定である。そして故安倍晋三国葬儀に臨むのだ…(以下は本誌掲載)申込はこちら