8月15日 岸田内閣組閣『狡猾』な人事ー高市、西村両氏を取り込み萩生田氏を党四役に

8月10日午後、第2次岸田文雄改造内閣が発足した。今回の岸田首相による内閣改造と自民党執行部刷新は、かなり「狡猾な人事」と言っていい。盟友・安倍晋三元首相亡き後、フリーハンドを得た岸田氏はほぼ思い通りの人事を断行したということである。
 注目すべきは、萩生田光一前経済産業相(安倍派)を自民党政調会長に据え、高市早苗前政調会長(無派閥)を経済安全保障相に据えたことだ。 萩生田氏は、オール経産省の留任待望論もあり、8日の閣議後の記者会見で「重要な案件が控えており、人が代わって大丈夫なのかという思いがある。継続が望ましい」と、自らの続投を求めるかのような発言をした。エネルギー、グリーントランスフォーメーション(GX)、経済安全保障政策などでリーダーシップを発揮してきたことからの自負と受け止められた。 実際はどうなのか。自民党政務調査会は政権党の主要政策の企画立案を担う1丁目1番地だ。
 それこそ現下の日本にとって、喫緊の課題である原子力発電再稼働から防衛費GDP(国内総生産)比2%超の実現に至るまで政調会長の手腕に負うところ大である。霞が関官僚群に政治力を行使して成し遂げれば、同氏には党内のさらなる高みが見えてくるはずだ。▶︎

▶︎同じく党内保守派で安倍氏後継を自任する高市氏は、政府の経済安全保障政策を所管する。安全保障上の重要物資・エネルギーサプライチェーン(供給網)対策では所管を巡り経産省との線引きが難しい。奇しくも、西村康稔経産相(安倍派)とはかつて同じ釜の飯を食べた関係である。
 ところが事が単純ではないのは、3人共に安倍氏に私淑した間柄であるが、保守度の濃淡に違いがあることだ。憲法観からジェンダー(男女格差)問題まで最右翼に位置する高市氏、その一歩手前に立つ萩生田氏、そしてさらに左側に離れる西村氏という印象である。誰が次期安倍派の会長になるのか、誰が党内保守派の頂点に立つのかは別である。直截的な言い様だが、岸田氏は高市、西村両氏を閣内に取り込み、萩生田氏を党四役に囲い込んだことを「狡猾」と表現したのである。
 ただ明らかになったのは、萩生田氏が頭一つ抜け出たことである。河野太郎デジタル相は親分の麻生太郎副総裁の頭越し、森山裕選対委員長も茂木敏充幹事長とソリが合わないことを承知した上での人事だ。麻生、茂木氏を両辺とする権力の三角形を確立した岸田氏は強かなのだ。