8月29日付「11月下旬の岸田・習会談の実現を目指すー日中高官協議の謎」

8月17日に中国の天津特別市で行われた秋葉剛男国家安全保障局長と楊潔篪共産党政治局員の7時間会談は在京外交団にも衝撃を与えた。では、この日中高官協議のどこが衝撃と言うのか、である。
 まず、夕食を交え8月29日号)のタイトル:「11月下旬の岸田・習会談の実現を目指すー日中高官協議の謎」たにしても7時間超というのは驚きである。同日午前8時前に日本航空(JAL)チャーター機で羽田空港を発った秋葉氏は昼過ぎに天津に着き、ホテルにチェックインした。その後、同日夕に市内にある共産党中央対外連絡部の施設を訪れた。そして楊氏とのロングラン会談は深夜まで行われたのだ。次に指摘すべきは、秋葉・楊会談は通訳とノートテイカー(記録係)も参加しないテタテ会談だったことである。楊氏は英語が堪能である。すなわち、同会談の中身は両氏の頭の中に残されているだけだ。
 ここで想起されるのは、昨年の3月に米アンカレジで行われた米中外交・安保高官協議のこと。バイデン政権発足後、初めてジェイク・サリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)は中国の習近平国家主席(共産党総書記)最側近の楊潔篪氏と2日間に及ぶ会談に臨んだ。この米中高官協議には双方から専門家が陪席した。▶︎ 

▶︎だがこれを契機にサリバン氏がジョー・バイデン大統領の、そして楊氏が習主席の代理人として両首脳のホットライン役を担っている。件の秋葉氏の天津訪問に戻る。実は8月2日午後2時(米東部時間)からホワイトハウスでサリバン氏と会談していたのだ。岸田文雄首相が前日(同)にニューヨークの国連本部で開かれた核拡散防止条約(NPT)再検討会議で演説後、首相一行と別れて密かに首都ワシントン入りした。秋葉氏は日中高官協議前に、米側のカウンターパートであるサリバン氏と擦り合わせを行っていたのだ。
 これはいったい何を意味するのか。筆者は、実は18日午後に懇談した首相官邸幹部から、「秋葉氏が楊氏に会談を申し入れたのは2カ月前で、楊氏から日時・場所を指定した訪中要請が届いたのは2週間前」と聞いていた。つまり林芳正外相が王毅・国務委員兼外相から日中外相会談をドタキャンされる前から水面下で準備されていたということである。相次ぐなぞなぞで恐縮だが、この事実を如何に解釈すべきか。解は、バイデン・習会談同様に11月下旬の岸田・習会談の実現を目指しているのだ。