第20回中国共産党大会は10月22日、閉幕した。習近平総書記(国家主席)が16日に行った中央委員会活動報告(政治報告)で、台湾問題について「祖国の完全統一は必ず実現しなければならず、必ず実現できる」と言明した上で「決して武力行使の放棄を約束しない」と断じたのだ。改めて台湾統一に向けて「武力行使」の可能性に言及したことは看過すべきではない。
では「1強体制」を確立した習氏の対日、対米政策における“外交比重”は減じるのだろうか。それを占うのが外交当局の人事である。焦点は、中国外交を担ってきた元駐米大使・外相の楊潔篪共産党政治局員(72)の後任人事だ。中国専門家の間では、王毅・国務委員兼外相(69)が有力視されている。その場合、同氏は党中央委員から現在25人の政治局員に昇格する。もちろん、対抗馬はいる。宋濤・前党中央対外連絡部長(67)だ。福建省長時代の習氏に抜擢された元外務次官である。我が外務省が同人事に神経を尖らすのは、中国外交部「日本閥」出身で知日派の王氏が習体制下で筋金入りの対日強硬派に“変身”したからだ。来年春開催の全国人民代表大会(全人代)で後任外相人事が決まる。▶︎
▶︎外務省には悩ましい人事がもう一つある。それはバイデン米政権の内政司令塔である大統領首席補佐官人事が11月8日の米中間選挙後に予定されていることだ。下馬評に上がるスーザン・ライス国内政策会議委員長(57)もまた名高い対日強硬派なのだ。オバマ政権時の大統領補佐官(国家安全保障担当)時代、外務省は親中・嫌日の彼女に苦汁を飲まされている。だが米側にもアニタ・ダン大統領上級顧問(64)というライバルがいる。 いずれにしても、「王毅・政治局員」と「ライス大統領首席補佐官」だけは止めて欲しいというのが外務省の本音である。
先日、忌憚なく長時間話し合った外務省幹部は「中国の南・東シナ海での海上覇権活動が目に余るなか台湾有事にリアリティを帯びてきた。しかし緊密な日米同盟はより深化した。そんな折に、ライスがホワイトハウスのトップに就くなど考えたくもない」と語った。
一方の中国外交トップ人事については、実は外務省、首相官邸サイド共に口が重い。理由がある。インドネシア・バリ島で開催されるG20サミット(11月15~16日)で岸田文雄首相と習氏の首脳会談実現を模索しているためだ。