11月1日付 「岸田経済対策」第2次補正予算案29・1兆円 起死回生なるか〝萩生田・世耕ライン〟の踏ん張りが奏功

10月28日の閣議で、「新たな総合経済対策」の裏付けとなる令和4年度第2次補正予算案29.1兆円は決定した。旧統一教会問題で防戦一方を余儀なくされる岸田文雄首相の起死回生となるのか、政・官・業界の耳目を集めた。具体的には補正予算案の規模で、その発端は10月6日の参院本会議で自民党の世耕弘成参院幹事長の代表質問だった。世耕氏は冒頭、岸田首相に対し「経済対策の規模とスピードで、国家の意思を示すことが重要だ。真水(国費)で30兆円が発射台となるべきだ」と問いかけた。 
その後、自民党内では補正予算の規模を巡り、20~30兆円諸説が乱れ飛んだ。それは報道ベースでも同様である。18日に自民党の萩生田光一政調会長が岸田首相に「新たな総合経済対策に向けた提言」を手渡した。その後、「補正『30兆円』で金利上昇も」(19日の日経新聞コラム)、「総合経済対策20兆円超、エネ高騰負担減へ」(22日の読売新聞)、「総合経済対策26兆円規模、物価高・賃上げ重点」(25日の産経新聞)、「総合経済対策規模20兆円台半ば示唆―自民党幹事長、講演で」(同日の朝日新聞)などの報道が続いた。野党側も動いた。20日に国民民主党の玉木雄一郎代表が23兆規模、翌日に日本維新の会の馬場伸幸代表が18兆円規模の対策を、それぞれ岸田首相に申し入れている▶︎

▶︎筆者はまさにその頃、世耕氏から直接話を聞く機会があった。オフレコ懇談なので引用はできないが、一言だけ紹介する。「総理と2日に食事した際に30兆円で概ね同意を得た」――。筆者は当然、財政当局の取材もしている。財務省幹部は国内総生産(GDP)ギャップ相当額の15~20兆円が相場だと語っていた。 
だが、自民党提言を境に政治サイドから財政当局への政治圧力が強まったのは言うまでもない。水面下で萩生田・世耕連合は、①昨年より規模縮小では生活実感が見えていないと批判を受けることになり、②29兆円で妥結すると霞が関に押し切られた決定と見なされるとして、③政治主導と言える30兆円超に固執してきた。 
一応、奏功したのだ。加えて、経済対策の目玉となった「電気料金の2割支援」もコンセプトメーカーである保坂伸資源エネルギー庁長官を全面支援したのが萩生田・世耕ラインである。所属する自民党安倍派の次期会長を巡る混乱は続くが、両氏は経済対策で男を上げたのだ。