岸田文雄首相は1月8日深夜、欧米歴訪のため最初の訪問地パリに向けて羽田空港を発つ。欧米5カ国(フランス→イタリア→英国→カナダ→米国)訪問のメインイベントは、もちろん最後の訪問地ワシントンでバイデン大統領とのトップ会談である。「外交の岸田」を自任する岸田氏にとって、今年はまさに外交・安保政策で正念場を迎える。主要7カ国(G7)首脳会議(5月19~21日)を地元・広島で、しかも自ら議長として主宰するのだ。これ以上の晴れがましい舞台はあるまい。岸田氏のG7広島サミットへの拘りは想像を超えたものである。
然るに、ロシアによるウクライナ侵略、中国の台湾進攻懸念などからも、日米同盟の緊密化は絶対不可欠であり、そのためにも日本が果たすべき役割を具体的に米側に示す必要を痛感していたのだ。首相周辺によると、昨年12月16日に閣議決定した国家安全保障戦略に「日米安全保障体制を中核とする日米同盟は、我が国の安全保障のみならず、インド太平洋地域を含む国際社会の平和と安定の実現に不可欠な役割を果たす」と記述されたことに尽きる、と岸田氏は語ったという。平たく言えば、日本の本気度を「予算」と「装備」でバイデン氏と米議会に示したのである。▶︎
▶︎2027年までの5年間に防衛費総額43兆円、現行5年間の計画の約1.6倍に増やす。27年度に国内総生産(GDP)比2%にする。23年度予算案で防衛費は過去最大の6.8兆円とした。その財源は、基本的に防衛増税で充当する。防衛装備品についても、相手の発射基地を叩く反撃能力を持つために当面は米製巡航ミサイル「トマホーク」などを導入する。英・伊両国と次期戦闘機を開発生産する。要するにこういうことだ。自分がやるべき事は自分でやります――。
ある意味で、至極簡単なことなのだ。それを今までやってこなかった事のツケが回ったのである。極論すると、一発のミサイルが日本国民を覚醒させた。昨夏のペロシ米下院議長(当時)の台湾訪問に激怒した中国は、同女史が韓国に向け発つや周辺海域で軍事演習を再開、中国軍弾道ミサイルが沖縄県与那国島沖80㎞に着弾したのだ。同島から台湾の距離は約110㎞である。「台湾有事」を実感したと言っていい。こうして万感の思いを胸に岸田氏は13日にホワイトハウスでバイデン氏と会談する。岸田氏は「ジョー!やったぜ」と切り出すに違いない――。