4月23日に投開票された第20回統一地方選後半戦最大の焦点とされた衆参5補選に関するマスコミ各社当日の出口調査数値が大きく異なった。故に本誌も手元に届く数値がその度に違い,振り回された。衆院千葉5区,衆院和歌山1区,そして参院大分選挙区のことだ。具体例を挙げる。NHKの23日午前出口調査は以下の通りだった。
千葉1区=英利アルフィヤ(自民公認・公明推薦)27%,矢崎堅太郎(立憲民主公認)31%,和歌山1区=門博文(自民+公明)43%,林佑美(維新)44%,大分選挙区=白坂亜紀(自民+公明)47%,吉田忠智(野党統一)53%。時事通信出口調査(当日午前):千葉5区=英利22.1%,矢崎42.6%,和歌山1区=門32.4%,林53.5%,大分選挙区=白坂48.7%,吉田51.3%。読売新聞出口調査(当日午前に期日前を含む):千葉5区=英利32%,矢崎26%,和歌山1区=門52%,林39%,大分選挙区=白坂49%,吉田48%。千葉1区についてはNHK,時事ともに野党・矢崎優勢の数値を出したが,読売は英利が頭ひとつ抜けたと報じた。
一方,和歌山1区ではNHKが期日前調査を含めて一貫して維新の林に勢いがあるとした。大分選挙区では3社ともに大接戦のなか立民の吉田リード報道に終始したが,土壇場で読売が1Pの差で白坂逆転の数値を出した。かくも各社の見立ては大きく異なった。従って,本誌も当日午後6時過ぎ頃時点で,選挙予測のプロとの情報交換の中で自民党「1勝4敗」の可能性はゼロではないとの判断に傾きつつあった。▶︎
▶︎ところが,同夜7時半になって本誌が信を置く選挙分析専門家が自民は千葉の英利辛勝,大分も白坂が首の皮1枚の差で吉田を破る可能性が強くなったと伝えてきた。結果的にその見立て通りとなったのである。では岸田文雄首相は,内実はともかくこの「4勝1敗」で党内求心力を回復して,一部報道にあるように「首相の解散判断に追い風」(産経新聞24日付朝刊),果たして早期の衆院解散・総選挙踏み切るのだろうか。
先ずは今回の5補選の結果が自民党内にどのような影響を与えるのかについて検証したい。第1に挙げるべきは和歌山1区に二階俊博元幹事長が自らの威信を賭けて二階派(志帥会・42人)元職の門博文を擁立して総力戦で臨んだが,統一地方選前半戦の大阪府知事・市長のダブル選と奈良県知事選を制した維新旋風の前に敗れ去った。このダメージは今後の政局を見据える上で看過できないほど大きい。日中議連会長に就任したばかりの二階の「威光」がこの一事を以って色褪せたと言っていい。
一方,同じ和歌山を地元とする世耕弘成参院自民党幹事長に門選対本部長として共同責任を問う声もあるが,世耕は大分選挙区に公募・擁立した白坂の応援で自ら2度大分入りし,参院安倍派(清和会・41人)比例代表議員を集中投入するなど大谷翔平ならぬ「2刀流」に徹したためダメージが軽微で済んだ…(以下は本誌掲載)申込はこちら