のっけから何故と思われるかも知れないが,2月4日に実施された前橋市長選と京都市長選から始めたい。永田町関係者の間ではもちろん,旧通産省OBで参院議員を務めた松井孝治元官房副長官(鳩山由紀夫民主党政権)が自民,立憲民主,公明,国民民主党の推薦を受けての立候補であり,共産党が支援した無所属新人の福山和人弁護士にどれだけの大差で勝利するのかが関心事であった。だが,松井は福山の猛追をギリギリかわしての当選だった。
一方の群馬県の県都である前橋市長選は仰天する結果となった。翌5日付朝刊の毎日新聞「前橋市長選 自民系敗北―裏金影響か『逆風吹いた』」(政治面)と朝日新聞「自公系現職敗れる―前橋市長に小川氏」(社会面)のみが,その見出しで事の深刻さを示唆していた。「自公系」は無所属現職で3期目を目指した山本龍候補であり,小渕恵三元首相の元秘書・県議である。現職市長が無所属新人の元県議・弁護士,小川晶候補に大敗を喫したのだ。警察公安筋が「新左翼系元活動家」と見なす小川は選挙期間中に「三里塚闘争活動家の娘」と陰口を叩かれたが,事実上の「自公vs立民・国民・社民・共産+連合」の与野党対決を制しての当選だった。群馬県は衆院全5小選挙区と参院選挙区を自民が独占する「保守王国」である。▶︎
▶︎即ち,衆院は先に自民党の「派閥解散ドミノ」の中で茂木派(平成研)を退会した小渕優子選対委員長(群馬5区・当選8回),政治資金パーティーを巡る裏金事件で旧安倍派幹部の責任を求めた福田達夫元総務会長(同4区・4回),旧二階派の中曽根康隆前内閣府政務官(同1区・2回),参院には旧二階派の中曽根弘文元外相(参院当選7回)がいる。小渕優子は恵三元首相の長女,福田達夫は康夫元首相の長男で赳夫元首相の孫,中曽根康隆が康弘元首相の孫,中曽根弘文は康弘元首相の長男である。福田赳夫,中曽根康弘,小渕恵三,福田康夫元首相4人の長男,長女,そして孫のオンパレ-ドはまさに「世襲政治」の象徴だ。斯くも「保守王国」である群馬県前橋市長選で自公系候補が敗北したのは,「毎日」見出しにあるように,裏金事件の影響で逆風が吹いたからだ。
現在,岸田文雄首相は衆院予算委員会で行われている基本的質疑で,野党から自民党派閥の政治資金を巡る問題,取り分け政策活動費に関する疑惑についてトコトン追及されている。そんな中で,盛山正仁文部科学相(旧岸田派)が2021年衆院選で旧統一教会の関連団体の政策要望が記された推薦確認書に署名していた問題が新たに噴出した。与野党攻防の場である衆参院予算委が政府自民党にとって厳しい長丁場となるは必至だ。このままでは首相官邸周辺から流されていた24年政府予算案の「3月1日の衆院通過・同29日頃の成立」見通しに狂いが生じかねない…(以下は本誌掲載)申込はこちら