「岸田さんという人は,『究極の壊し屋』であることが分かった」――。朝日新聞デジタルの新言論サイトRe:Ron(3月22日14:30)の「自民党崩壊?経済回復?支持増えぬ首相は一体?混迷政治を読み解く」に掲載された御厨貴・東大名誉教授(政治史学専攻)の指摘である。御厨は同サイトのインタビューでこう続ける。<この状況(註:自民党は派閥パーティー収入裏金事件で内閣支持率に連動し党支持率が急落,各派閥は解散に追い込まれるなどカオス状態にある)は,岸田(文雄)さんにとって極めて有利です。最大派閥だった清和会(安倍派)はなくなり,首相を脅かす新たな動きも出てこない。いわば「一強」。支持率こそ低迷していますが,これまでの首相のように支持率を気にすることなく,妙に達観している。結果的に,強い首相になってしまった>。
同サイトには松原隆一郎東大名誉教授(経済政策専攻)のインタビューも掲載されている。松原はこう言う。<支持率は高くはないですが,大きな国政選挙をしなければ,それ自体が問われることはない。岸田首相にすれば,現状は決して悪くないと思います。しかし,首相として日本をどうしたいのかは,就任から2年半たっても分かりやすい言葉がない。アベノミクスというストーリーを作った安倍晋三・元首相はそこが大きく違います>。▶︎
▶︎要するに,両碩学は岸田首相が2005年8月の「郵政解散」を断行した小泉純一郎元首相のように「自民党をぶっ壊した」と言っているのだ。では,今後の岸田を待ち受ける難題は何なのか。
先ずは一連の派閥の政治資金規正法違反事件を巡る安倍派幹部に対する処分問題である。党規律規約が定める処分は重い順に以下の8段階。①除名②離党勧告③党員資格停止④選挙における非公認⑤国会及び政府の役職の辞任勧告⑥党の役職停止⑦戒告⑧党則の順守勧告―。
これまで重い処分対象者として取り沙汰されてきた安倍派の「5人衆」(松野博一前官房長官,西村康稔前経済産業相,高木毅前国対委員長,萩生田光一前政調会長,世耕弘成前参院幹事長)ではなく,ここに来て先の衆参院政治倫理審査会に出席した塩谷立,下村博文・両元文部科学相,西村,世耕の4人に絞られたとされる(安倍逝去1カ月後の22年8月に開かれた裏金還流への対応協議の同派幹部会合に塩谷と下村は会長代理,西村が事務総長,世耕は参院会長として出席)。読売新聞(23日付朝刊)は一面トップで「安倍派4氏非公認へ―塩谷,下村,西村,世耕氏―自民処分調整」と報じ,4段階の「選挙非公認」の可能性に言及した。党内には同派幹部のうち座長の塩谷だけは3段階の「党員資格停止」,2段階の「離党勧告」のいずれかになるとの観測がある…(以下は本誌掲載)申込はこちら