今、永田町では次期衆院選を巡る諸説が乱れ飛び、関係者はその真偽確認のため大わらわである。そもそもは岸田文雄首相が今国会会期末までの衆院解散に前のめりになっていることに端を発している。その心は、岸田氏が9月の自民党総裁選再選にはそれまでに衆院選を実施し、自公過半数維持さえ叶えばよいと考えているからだ。とはいえ、首相周りの筆頭格の木原誠二自民党幹事長代理を始め、党内最大の実力者である麻生太郎副総裁や政局のキーマンとなった森山裕総務会長、党本部の「金庫番」とされる元宿仁事務総長までが早期解散反対を唱えているのが現状である。
詰まるところ、岸田氏は今や「孤高の人」状態にあるのだ。それでも、早期解散説は次から次と浮上して来るのは岸田氏ご本人が今夏までの解散総選挙に拘泥しているためだ。国民の政治不信が解消する兆しはほぼ皆無。その引き金を引いたのが自民党派閥の政治資金規正法違反(裏金)事件である。どうやら岸田氏は、世上をつぶさに観察すれば「岸田も悪いが、もっと悪いのは自民党」が国民一般の受け止めと判断しているようだ。そして、直近のメディア各社の世論調査すべてで内閣支持率が微増している事実を周辺に指摘するという。僭越ながら、その気持ちは分かる。▶︎
▶︎そうはいっても、日を追うごとに「岸田包囲網」が狭まっているのは否定できない。こうして「6月11日解散・25日公示・7月7日投開票(東京都知事選とのダブル選挙)」説は鎮静化しつつある。
それでもその可能性はゼロではない。早期解散反対の森山氏が、12日に地元・鹿児島の講演で「解散、そう遠くない可能性がある」と発言したからだ。次に浮上したのは、政治資金規正法改正与党案を巡る自民、公明両党協議の不調から国会の会期延長不回避の見立てである。それは都知事選が終わるまで延長して「7月8日解散・23日公示・8月4日投開票」説だ。7月8日は奇しくも安倍晋三元首相の三回忌。規正法改正与党案成立→野党の内閣不信任決議案提出を受けて、岸田首相が「国民の声を聞いてみたい」と採決せず衆院を解散するシナリオだ。解散日を狙い撃ちせずの、与党案を巡る国会審議が大紛糾→与野党譲らずヒートアップして不信任案提出→解散もあり得る。残るケーススタディは内閣不信任案を否決するが、岸田氏不出馬の総裁選を実施、新総裁で今秋の総選挙というもの。その顔は未だ見えない。