お盆休みを前に9月下旬に行われる自民党総裁選出馬への意欲を隠さない旧派閥の領袖級有力者や党内若手の期待を集める新興勢力の代表者らの動きが際立ってきた。その中でも特に目立つのが茂木敏充幹事長である。茂木は23日午前,党役員会後の記者会見で自らの東南アジア4カ国訪問(7月28日~8月4日)を明らかにした。記者団との質疑応答で訪問するインドネシア,シンガポール,タイ,フィリピンにこの1~2年で新しい政権が誕生しており,各国のトップ,閣僚,議会人,大手企業経営者と意見交換して重層的な関係を構築することが重要だと述べた。改めて指摘するまでもなく茂木が総裁選を念頭に活発な動きを見せるようになったのは,11月5日の米大統領選でドナルド・トランプ前大統領再選の可能性が現実味を帯びて来てからだった。茂木はトランプに伍して交渉出来るのは党内に自分を措いていないとの強い自負を持つ。その茂木は5月にシンガポール首相に就いたローレンス・ウォン前財務相と親しく,その会談アポイントを自らが取った。
だが,インドネシアのジョコ現・プラボウォ次期大統領,タイのセター首相,フィリピンのマルコス大統領との会談日程は未だ取れていない。外務省は茂木の熱量が高いので死ぬ気でやっている。党内工作も活発だ。鈴木貴子青年局長(旧茂木派)が旧派閥横断的に衆院当選4回以下の若手に呼び掛けて夕食会・飲み会をセットし,その席に茂木が顔を出すという段取りだ。自身の声掛けを重ねてきたこともあり,旧安倍派中堅・若手の相当数を掌中に収めたと言われている。▶︎
だが茂木の総裁選出馬には今なお麻生派55人を擁する麻生太郎副総裁のゴーサイン(エンドース)が必要だ。6月16日夜の東京・麻布十番のレストラン「イルブリオ麻布」で会食後,両氏は差しで会っていない。麻生は,自派の甘利明元幹事長が見出した小林鷹之前経済安全保障相(旧二階派・当選4回)を若手代表として推す可能性を視野に入れているとされる。
次は,肝心要の岸田文雄首相である。弊誌は前号で,岸田の現在の心境を表す孔子の言葉「君子固より窮す。小人窮すれば斯に濫る」を紹介した。何と首相官邸サイドから反応があったのだ。曰く「確かに(岸田)総理は窮している。だけどそこは小人と違い乱れず,(目標に向かって)主戦論で臨んでいます。まさに動じていないんです」――。件の官邸関係者は,永田町ではジョー・バイデン米大統領同様に最終局面で総裁選不出馬を決断するとの見方が優勢だが,岸田出馬の意志は強く固いと言っているのだ…(以下は本誌掲載)申込はこちら