最近の岸田文雄前首相は自民党総裁選に関する国内外のメディア、識者からの批判的な言及に接してそれ見た事かオレの言った通りだったろう、と半ば口惜しがっているに違いない。米シンクタンクの「ジャパン・ハンド(日本専門家)」の殆どが、民主、共和党系を問わず、岸田政権3年間を振り返って高く評価している。お世辞ではないことは、具体的な業績を挙げたそのコメントからも覗える。公正な判定に従えば、分けても2022年12月の「安保3文書改定」(防衛予算増額)と、23年12月の日本経済の成長と国民の資産所得の増加に繋げる「資産運用立国」策定は岸田氏のレガシーと言える。
事実は「首相動静」が教えてくれる。首相最後の日9月30日午前11時過ぎから、岸田氏は首相官邸で2組と面談した。1組目が金融庁の井藤英樹長官、有泉秀金融国際審議官、堀本善雄政策立案総括審議官、油布志行企画市場局長。2組目は防衛省の増田和夫事務次官、中嶋浩一郎防衛審議官、吉田圭秀統合幕僚長、森下泰臣陸上幕僚長、斎藤聡海上幕僚長、内倉浩昭航空幕僚長。説明する。後者は海上自衛隊の護衛艦「さざなみ」が9月25日、自衛隊発足後70年にして初めて台湾海峡を通過した事案との関係だ。中国は今夏以降、情報収集機による日本領空侵犯を繰り返し、同日には訓練用の模擬弾頭を搭載したICBM(大陸間弾道ミサイル)を太平洋の公海に向けて発射するなど軍事的な威圧を強めていた。▶︎
▶︎日本に新政権が誕生する前に中国を強く牽制しておく必要があると判断した岸田氏が訪米中の同21日、木原稔防衛相(当時)に秘匿電話で海自艦船台湾海峡通過の出動命令を発出したのだ。「さざなみ」の台湾海峡通過後の28日、海自は南シナ海で日・米・豪・比・NZの5カ国海軍と合同演習を行った。岸田氏は最後っ屁に対中強硬姿勢を軍事作戦によって国内外に示したのだ。
前者の解は以下の通り。資産運用立国実現プランは、22年11月の資産所得倍増プラン、23年4月のコーポレートガバナンス改革のアクションプログラムに続く第3弾。このプラン作成に関与したのが金融庁では堀本氏だった。同氏は石破茂首相が戦略特区担当相時に参事官として内閣府に出向していた。10月3日夜、石破氏も岸田氏が海外の投資家や資産運用会社を集中的に日本に招き、貯金から投資や資産運用にシフトさせた「資産運用立国」路線継承を発表した。戦略再調整を余儀なくされたのだ。