先週半ば、外務省(岡野正敬事務次官)の幹部と長時間話す機会を得た。話題は当然、来年1月20日に発足するトランプ政権であった。報道先行もあったが、日本では国務長官にハガティ上院議員、商務長官にライトハイザー元米通商代表部(USTR)代表といった知日派の指名期待が高かった。だが、見事に裏切られた。傷心のライトハイザー氏は、やはりトランプ第1期政権のオブライエン元大統領補佐官(国家安全保障担当)が退任後、ワシントンに設立したコンサルタント会社アメリカン・グローバル・ストラテジーズ入りした。
実は、そのオブライエン氏のトランプ2.0要職就任を我が国で期待していたのは北村滋元国家安全保障局長である。北村氏自身が同社顧問なのだ。元駐日大使のハガティ氏が政権要路に就くことを期待していたのはオールジャパンである。事実、トランプ人事が関心を集めていた只中の11月下旬にワシントンを訪れた長島昭久首相補佐官はハガティ氏と短時間ながら面談できたことで、鬼の首を取ったかのような喜びだったと聞く。ルビオ上院議員が国務長官に指名されたことで、大統領選と同時に実施された上院議員選で共和党は非改選38と改選当選15合わせて53議席となり過半数を制した。だが、ルビオ国務長官に加えてハガティ氏まで政権入りすると53マイナス2で51議席になってしまう。つまりハガティか、ルビオの選択の初戦でハガティは敗退したのだ。▶︎
▶︎それでも我が方のワシントン特派員の関心をなぜ集めないのか理由は分からないが、重要な情報が届いていない。大統領補佐官(国家安全保障担当)に指名されたウォルツ下院議員に関する案件である。米陸軍特殊部隊員(グリーンベレー)としてアフガン、中東、アフリカ従軍、州兵大佐。国防総省政策顧問、ホワイトハウス国土安全保障政策顧問。この人事には日本にとって大切な秘事がある。
それは2021年にウォルツ氏が再婚したジュリア・ネシェワット博士のことだ。ヨルダンからの移民の子としてニューヨーク州カーメルで生まれ、フロリダ州ウマティラで育った(因みにウォルツ氏も同州生まれ)。ジョージタウン大学外交大学院で国家エネルギー安全保障の修士号、東京工業大学(現東京科学大学)大学院で理工学博士号取得。国務次官補代理(エネルギー資源担当)などを経て大統領補佐官(国土安全保障・テロ対策担当)となった。米外交問題評議会(CFR)研究員として日本滞在中に3.11を体験した。超知日派であり、有力な援軍となる。外務省幹部の笑みも得心できる。