ドナルド・トランプ米大統領による相互関税が4月9日午前0時01分(米東部時間・日本時間9日午後1時01分)発効する。中国の発効時間はその12時間後である(日本時間10日午前1時01分)。中国の習近平指導部が米国の相互関税への報告措置として34%とその他の非関税報復措置を発表したことからトランプ米政権は50%の追加関税上乗せで応じた。このトランプ・習間のチキンレースの様相を帯びてきた関税報復合戦は留まるところを知らない。
今後,中国製品には従来の税率10%から20%に引き上げた追加関税に34%の相互関税が加わり,さらにそこへ50%を上乗せすると累計104%が課せられる。中国商務省は8日,トランプ関税の上乗せ措置に強く反発し「米国が独断を貫くなら最後まで断固として戦う」との報道官談話を公表した。Tariff man(関税男)を自任するトランプは側近の助言「殿下,ほどほどになされよ」に耳を貸さず関税エスカレートへ爆走する。
一方の習はトランプの経済的強制に屈すれば途端に中国内外から及び腰で妥協する指導者の烙印を押されかねない。
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▶︎では,米中両国はこのままコリジョンコース(最終衝突局面)に突き進むのか。当面は,現下の米中貿易戦争が米中金融戦争にまで発展するのかが最大の焦点である。トランプが「ディール(取引)」が叶ったとして対中強硬路線の転換なり,政策を軌道修正すれば別だが,そうでなければ習近平指導部は「切り札」として①保有する米国債約7700億㌦(約112兆円)の売却,②IT(情報・通信)・AI(人工知能)産業に欠かせない重要鉱物資源レアアースの輸出規制強化,③人民元の対ドル為替レートを使った通貨切り下げ発動などのリスクも浮上する。因みにトランプの誕生日が6月14日(79歳),習は6月15日(72歳)であり,かつては米中和解あり得るとの楽観的見通しとして,トランプが同中旬に北京を訪れてトランプ・習との「誕生日パーティーサミット(Birthday Party Summit)」が実現するとの見立てすらあった。
だが,もはやそれは見果てぬ夢となり,米政治サイトのアクシオスやCNNが報じたように,首都ワシントンで国防総省(ペンタゴン)からホワイトハウス(WH)まで約6㎞の軍事パレードが実施される。同日は米陸軍創設250年の記念日でもある。WHの主として返り咲いたトランプが大統領執務室の設えとして最初に行ったのが米陸海空・海兵隊4軍の軍旗を壁に掲げ,歴代大統領でも際立つ関税政策を実施したジャクソン第7代大統領の肖像画を飾ったことである。ある意味で,実に分かり易い人間なのだ…(以下は本誌掲載)申込はこちら