4月16日午後、東京・永田町の衆院第二議員会館第1会議室で「東アジア・ASEAN経済研究センター(ERIA)を支援する超党派議員連盟」の第6回総会が開かれた。 東アジア経済統合推進を目的として、地域の課題分析、政策の立案及び提言を行う国際的研究機関として設立された東アジア・ASEAN経済研究センター(ERIA)は、2007年11月にシンガポールで開催された第3回東アジア首脳会議で16カ国(ASEAN=東南アジア諸国連合10カ国+日・中・韓・印・豪・NZ)の首脳により合意、08年6月の設立総会を経て今日に至る(事務局はインドネシアの首都ジャカルタ)。
そもそもERIA構想は、06年4月に我が国の提唱後、設立の準備が進められて翌年の東アジア首脳会議での合意に進展した経緯もあり、ERIAを支援する議員連盟が10年10月に発足した。同議連設立時の設立発起人は二階俊博元自民党幹事長、武部勤元幹事長、河村建夫元官房長官、塩崎恭久元官房長官、林幹雄元幹事長代理(会長・二階氏)の5人で、昨年10月までに全員が国会議員を引退している。今回の第6回総会の主たるテーマは役員選任であり、要するに世代交代である。最高顧問・岸田文雄前首相、会長・萩生田光一元政調会長、副会長・武見敬三前厚生労働相ら4人、幹事長・鶴保庸介元沖縄・北方領土担当相、幹事長代理・小林鷹之元経済安全保障相、事務局長・伊藤忠彦復興相、事務局長代理・鈴木英敬選対副委員長。
そして今総会の呼びかけ人12人は次の通り(五十音、敬称略)。赤羽一嘉(衆院当選10回・公明党)、伊藤忠彦(6回・旧二階派)、小西洋之(3回・立憲民主党)、小林鷹之(5回・旧二階派)、鈴木英敬(2回・旧安倍派)、武見敬三(参院5回・麻生派)、谷合正明(同4回・公明党)、鶴保庸介(同5回・旧二階派)、萩生田光一(衆院7回・旧安倍派)、浜口誠(参院2回・国民民主党)、山際大志郎(衆院7回・麻生派)、山口壮(8回・麻生派)。確かに超党派議連の体裁は整っている。公明2人と立民、国民民主が各1人。自民党派閥をみると分かり易い。麻生派3人、旧二階派3人、旧安倍派2人。そして最高顧問の岸田氏が首相時に閣僚を務めたのが小林経済安全保障相、萩生田経産相、山際経済再生相、山口環境相、武見厚労相の5人である。▶︎
▶︎永田町では今、先の旧安倍派の政治資金パーティー収入の「裏金事件」で役職停止処分を受けた萩生田氏が4月3日付で晴れて処分解除の身となり、このERIAを支援する超党派議連の会長就任が再出発の起点になると話題になっている。麻生氏はかつて故安倍晋三元首相の「秘蔵っ子」とされた萩生田氏を高く評価しており、岸田氏もその政治手腕を買っているという。萩生田氏再デビューの場と位置付ける理由は他にもある。実は、注視すべきもう一つの議連が存在する。昨年12月に発足した「アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)議員連盟」(会長・齋藤健前経済産業相)である。アジアの脱炭素化に貢献する日本の技術支援やルール整備などについて議論・協力するものだ。このAZEC議連の最高顧問は岸田前首相であり、事務局長が鈴木選対副委員長である。ERIA、AZEC両議連に名前を連ねる人物が重なる。
さらに注目に値するのは、5月の大型連休中の3~7日の岸田氏を団長とするAZEC議連のインドネシア、マレーシア訪問である。首相特使の岸田氏らは5日にジャカルタでインドネシアのプラボウォ大統領、6日にクアラルンプールでマレーシアのアンワル首相と会談するという。この訪問団には、萩生田氏、かつて石破派に所属した齋藤氏(衆院6回)、岸田氏最側近の木原誠二選対委員長(6回・旧岸田派)、東京都連会長の井上信治政調会長代理(8回・麻生派)らが加わっているのだ。旧茂木派を離脱した小渕優子組織運動本部長(9回・無派閥)が参加するとの説もある。この外遊を一言で言い表せば、実に「生臭い」のである。岸田・木原両氏(旧岸田派代表)、井上氏(麻生氏名代)、萩生田氏(旧安倍派代表)が海外出張中に「ポスト石破」を巡り、忌憚なく話し合い、且つ腹合わせを行うのではないか。
一方、日米閣僚級関税交渉にドナルド・トランプ大統領が乱入したことで、首相最側近の赤澤亮正経済財政・再生相は重い宿題を背負って18日午後に帰国し、首相官邸に向かい石破首相に報告する。石破氏は当面、全ての政治資産を投入して宿題の答えを用意しなければならない。宿題提出締め切り日はトランプ氏79歳の誕生日=米陸軍創設250周年記念の6月14日であろう。どうやら永田町の一部で取り沙汰されていた東京都議選前の「国難対応解散」どころではなくなったようだ。