参院選大敗を受けて7月31日に発足した自民党参院選総括委員会(委員長・森山裕幹事長)は、8月最終週の27日頃に検証報告書を取りまとめる。同報告書発表と同時に、森山幹事長、木原誠二選対委員長らは選挙戦敗北の責任を取って辞任を表明する。では、森山氏ら選挙実務責任者の退陣で一件落着となるのか。
事はそう簡単ではない。参院選後、自民党内では旧茂木派(平成研究会)、旧安倍派(清和会)を中心とする勢力は、参院選大敗は昨年10月の衆院選、今年6月の東京都議選に続く3連敗の「スリーアウトチェンジ」(7月26日の茂木敏充前幹事長発言)であり、その責任は石破茂首相(党総裁)にあるとして、事実上の「石破降ろし」に踏み切った。石破氏の即刻の退陣と総裁選実施を求める署名活動は、一定程度の広がりを見せた。地方組織からの党執行部批判も絶えることが無かった。
一方、石破氏の対応は如何なるものだったのか。日米関税閣僚協議の日本側代表、赤澤亮正経済再生相が7月22日夕方(米東部時間)に米ホワイトハウスで行われたドナルド・トランプ大統領との70分に及ぶ「ディール(取引)」で相互関税15%と自動車関税(追加関税)15%まで引き下げた「成果」を掲げて、引き続き対米通商・貿易交渉を担うと宣言した。当分間、続投すると言い募ったのだ。いくら何でも「石破続投」は無理筋という永田町コンセンサスが成立するのにそれほど時間はかからなかった。ところが、である。力づくで石破氏を引きずり降ろしたい勢力に思わぬ伏兵が潜んでいた。党内唯一の派閥となった麻生派(志公会)43人を率いる麻生太郎党最高顧問のお墨付きで始めた旧派閥ぐるみの署名活動の真只中の事であった。7月30日、自民党東京都連(会長・井上信治党政調会長代理=麻生派)が次期衆院選の党公認候補予定者となる選挙区(東京11区)支部長に下村博文元文部科学相を選任した(党執行部は4月段階で決定)。同氏は旧安倍派「5人衆」とされた実力者で、一昨年来のパーティー収入不記載問題が立件された「裏金事件」によって昨年4月に1年間の党員資格停止処分を受けた。自民党3連敗は、今なお有権者が国政選挙の投票では「政治とカネ」問題を重視てしている証でもある。▶︎
▶︎それ故だからなのか。8月3日の朝日新聞(朝刊)が1面で「萩生田氏秘書略式起訴へ―自民裏金事件、検審議決受けて一転」と報じ、翌4日夜に「5人衆」の萩生田光一元政調会長、松野博一前官房長官、西村康稔元経産相が旧安倍派議員らと会食し、首相退陣を巡り意見交換したと伝わった5日には、石井準一参院自民党国対委員長(旧茂木派)が急きょ記者会見を開いた。県議5期、参院4回生のベテラン石井氏は地元・千葉選挙区(定員3人)で薄氷を踏む当選を果たしたが、下村氏の支部長選任を「これでは自民党が生まれ変わったとは言えない」とした上で「自民党の屋台骨を壊したのは不記載議員の存在だ」と断じた。 すなわち、党内は石破氏の早期退陣論と暫時続投論のせめぎ合いになっている。とはいえ筆者は、石破首相(総裁)は既に詰んだ状態にあると結論する。換言すれば退陣不可避ということだ。
そうした中で注目されるのが森山氏の去就である。冒頭で記したように森山幹事長の退陣もまた不可避であり、問題はそのタイミングである。永田町のディープスロートによると、石破官邸周りで今、密かに取り沙汰されているのは、①森山幹事長を参院選大敗の責任を取らせて同代行へ格下げする、②引責辞任を申し述べて提出した辞表を総裁預かりとする――の2つのシナリオだ。「そんな事は通用するはずがない」と、過半の永田町関係者は反応するだろう。しかし石破氏は自分周りが読めない単なるノー天気なのか、それとも使命感を抱く確信犯なのか判じることは出来ないが、暫くの間、内閣総理大臣を務めることが自らに課せられた責務だと固く信じている。事実、オール外務省で反対する月内の首相訪米→石破・トランプ会談を全く諦めていないのである。これもまた言葉を失う。
