今秋以降の政局を見通すうえで重要なのが、8月19日に東京・永田町の自民党本部8階「リバティ4号室」で午前11時から非公開で約1時間45分間に及んだ総裁選挙管理委員会(逢沢一郎委員長)初会合に続く今後の議論の行方である。
なぜならば、同委員会が昨年10月の衆院選に続き7月の参院選で大敗した石破茂首相(党総裁)の引責辞任につながる総裁選の前倒しの是非を決めるヒアリングを所管するからだ。具体的には、所属衆参院国会議員295人と47都道府県連の代表1人の総数342人の過半数(172人)の賛同があれば臨時総裁選の前倒しが実施される。議員らへの意思確認を「投票か書面か」「記名か無記名か」のいずれで以て行うのかの聞き取りを、遅くても9月初旬までに終えるとする。そこで精査すべきは同選管委員11人の「身上調書」である。委員長:逢沢一郎衆院議員(当選13回・旧谷垣G)、委員長代理:宮下一郎衆院議員(7回・元農林水産相・旧安倍派)、委員:山口壮衆院議員(8回・元環境相・麻生派)、丹羽秀樹衆院議員(7回・無派閥)、鬼木誠衆院議員(5回・旧森山派)、加藤鮎子衆院議員(4回・前内閣府特命担当相・旧谷垣G)、国光文乃衆院議員(3回・旧岸田派)、長谷川淳二衆院議員(2回・無派閥)、山下雄平参院議員(3回・旧茂木派)、小鑓隆史参院議員(2回・旧岸田派)、古庄玄知参院議員(1回・旧安倍派)。この選管委員を個別にチェックする。永田町ウォッチャーの間では、総裁選前倒し実施なのか、それとも見送りなのかが石破氏の命運を決めるとみる向きが過半である。朝日新聞(20日付朝刊)はこう書いている。<前倒し実施の決定は、石破政権の終わりと事実上同義だ。
一方、実施の見送りは首相の続投を意味する>。先ずは、委員長の逢沢氏。祖父・父が衆院議員の3代目で当選13回を数えるも、大臣経験無し。奇しくも初当選同期は石破首相、村上誠一郎総務相である。なぜ、逢沢氏だけ閣僚経験がないのか。今は「石破降ろし」に動く麻生、旧安倍、旧茂木の非主流3派は、かつて安倍晋三長期政権時代に主流派を謳歌した。逢沢氏はその間ずっと冷や飯組で入閣の機会は一度もなかった。要は、麻生、安倍、茂木各派に対し腹に一物を抱えているのだ。逆に、7回当選・閣僚適齢期の丹羽氏は首相続投が叶うと、絶好の入閣チャンスだ。一方、無派閥で元総務官僚・長谷川、旧茂木派だが元日経記者・山下両氏は前倒しの有無と関係なく次期総裁選でも小泉進次郎農林水産相の擁立コアメンバーだ。立ち位置はアンチ石破。カウントしてみる。前倒し派は、“石破嫌い”の麻生太郎党最高顧問の意向を体現する山口氏を筆頭に、旧安倍派の宮下、古庄両氏、そして超派閥(小泉派)の長谷川、山下両氏の計5人。続投派が逢沢氏を筆頭に、旧森山派の鬼木、旧谷垣G代表世話人だった中谷元・防衛相とは密接な関係にある加藤氏、入閣期待の丹羽氏の計4人。▶︎
▶︎現時点で旗幟を鮮明にしていないのは旧岸田派の元厚労官僚・国光、元経産官僚・小鑓氏の2人だ。カギを握るのが岸田文雄前首相であることは分かる。
たとえ秋の臨時国会召集までの期間限定であれ続投を容認すれば、石破氏に弾みがつく。それは外交日程と重なる。8月20日に横浜市で始まった「第9回アフリカ開発会議」(TICAD9)の初日、ゲストのアントニオ・グテーレス国連事務総長を前に石破首相は「インド洋・アフリカ経済圏イニシアティブ」構想を発表した。もちろん、かつて安倍氏が掲げた「自由で開かれたインド太平洋」(FOIP)取り組みを意識してのことだ。続く23日には韓国の李在明大統領が訪米の途上、東京に立ち寄り石破首相と会談する。今年は日韓国交正常化60周年。加えて、ウクライナ戦争を通じて北朝鮮がロシアとだけでなく中国とも緊密な軍産複合関係を強化していることから危機感を強め、尹錫悦前政権が築いた日本との密接な関係を維持する腹積もりとされる。インドのナレンドラ・モディ首相も来日する(29~30日)。この時期の日印首脳会談は極めて重い意味を持つ。ドナルド・トランプ大統領が10月下旬にクアラルンプールで開かれる東南アジア諸国連合(ASEAN)関連首脳会議に出席する。米印関係が険悪化する中でトランプ氏はこの時期に合わせてインドを訪問する。当地でQuad(日米豪印4カ国枠組み)首脳会合も想定している。両国間のリエゾンとして日本が果たし得る役割がある。
加えて、石破氏はその間の9月下旬、日米関税交渉合意54日目の同14日後にニューヨークを訪れて国連総会で「戦後80年談話」に代わる「核戦争のない世界」を全世界に向けてアピールする意向を胸中に秘めている。さらに石破氏はメガトン級のサプライズを用意している。来週、あの「自民党をぶっ壊す!」と叫んだ小泉純一郎元首相と会食するというのだ。二人を仲介したのは山崎拓元副総裁で、その場では小泉元首相が石破氏を激励するとされる。石破氏もまた旧来型自民党を壊そうとしているのだ。果たして目論見通りにいくのか――。