小林麻紀内閣広報官の下に設置されている内閣報道室から石破茂首相(自民党総裁)の緊急記者会見開催が内閣記者会に伝えられたのは9月7日午後3時40分。NHKはその25分前の同3時15分に「石破首相辞任へ」の速報を流した。NHKのスクープである。兆しはあった。
今にして思えば,の典型と言っていい未確認情報であるが,弊誌事務所のPCに届いたメール(前日6日未明0:02受信の記録が残っている)に次のように記されていた。『<霞が関情報>「この土日に石破&進次郎会談を模索中!石破が進次郎を後継指名し辞任表明か?」』――。後講釈と言われそうだが,20時間以上も前に石破首相が小泉進次郎農林水産相との会談を模索し場合によって退陣も考えているとする,確認の術がないストレート情報であったにしても,驚きは隠せない。強弁すると兆しは確かにあった。弊誌編集長は当然ながら,週を跨いだ8日に件の情報発信者に<霞が関情報>の背景を質した。それは後述する。弊誌が「首相辞任の可能性強まる」を知ったのは,6日午後8時30過ぎに菅義偉元首相と小泉が首相公邸に入り,石破と会談をしているとの第一報に接した午後9時頃だった。その後は米ワシントンからの問い合わせを含め,情報収集でてんやわんやだった。最大の関心事は,8日午前10時から臨時総裁選前倒し賛成の衆参院国会議員が意思確認の記名・捺印書類を同党本部に持参する前々日夜の会談であっただけに,ギリギリまで決断できない石破に引導を渡すためではないかとの見方の真偽が過半だった。▶︎
▶︎それでも菅は約30分で公邸を出たが,小泉がその後1時間半も残ったことから揣摩臆測が乱れ飛んだ。最後の最後まで続投に固執する石破が小泉に対し禅譲前提での幹事長就任を打診,自分が再選を目指して総裁選に出馬する時は推薦人になって欲しい―等々だ。菅も小泉も神奈川県選出衆院議員である。増してや小泉は自民党県連会長だ。その神奈川県下の50近くある各支部は前倒しを巡る意見集約を6日締め切りで行っていた。同県連は2日の総務会で,前倒しを求めるかの是非について県内各地域連合支部や県連所属議員の意見を聞くと決めている(産経新聞3日16:08配信)。即ち,県連トップの小泉に各支部の意見集約の結果(=賛成多数)が逐一報告されていた。それは菅とも共有された。ここから各紙の検証記事にあるように,このまま本人の記名・捺印書類持参を強行すれば党分裂は不可避として小泉が菅に対し「総理に翻意をうながせるのは菅さんだけ」と説得・同意した上で石破との面談アポを取り付けたというのが時系列上の真相だ。
では,件の<霞が関情報>発信者はいかにして取得したのか。ディープスロートは経済界要人であり,経済産業省OB経由であるというのだ。ここで少々振り返ってみたい。そもそも,将棋に例えるなら,石破は詰んでいた。数手で石破「玉」は万事休す,普通の棋士ならとっくに「投了」していた局面だった。石破は普通ではない。残り時間いっぱい使う約50日間の長考に入った。残り時間のタイムアップは9月8日。総裁選前倒しの賛成申告までで,目前に迫っていた…(以下は本誌掲載)申込はこちら