自民党総裁選(9月22日告示・10月4日投開票)は連日連夜,独自色を薄めた目立たない堅実路線で臨む小泉進次郎候補とプロ筋の間で囁かれる劣勢説挽回のため保守色を強めに出した高市早苗候補の2人を軸に5候補が鎬を削っている。弊誌が驚いた小泉,高市両候補の発言から紹介したい。
先ず,少々長いが高市発言。同日午後,東京・永田町の自民党本部で開かれた総裁選管理委員会(逢沢一郎委員長)主催の所見発表演説会冒頭,「奈良の女です。大和の国で育ちました」との切り口上を述べた上で以下のように語った。「(外国から観光に来て)奈良公園のシカを蹴り上げ,殴って怖がらせる人がいる。日本人が大切にしているものを,わざと痛めつけようとする人がいるとすれば,行き過ぎである」と,シカ暴行を外国人対策問題に引き寄せた。当然,SNS上で炎上した。一方の小泉は同夜,テレ東の看板番組「ワールドビジネスサテライト(WBS)」に他の4候補と生出演した。キャスターは元日経ビジネス編集長の山川龍雄同局解説委員であり,トランプ米政権との向き合い方も含め各候補の経済政策を中心に討論した。小泉の不安材料は,昨年9月総裁選の討論会を通じて明らかとなった応答力の脆弱さだ。実際,日本記者クラブ(JNPC)主催の公開討論会が東京・内幸町の日本プレスセンターで開かれ,弊誌編集長も傍聴した際にそれを感知した。鋭い質問に答えられず言いよどみ,不得意のテーマでは答えをはぐらかす場面を散見した。▶︎
▶︎ところが小泉はこの1年で成長したのか,スペシャリスト・山川の鋭い質問にも無難に答えていた。仰天したのは賃上げと物価高の追いかけごっこ只中でキーとなる解雇規制の緩和を巡る問題を質されても,雇用流動性を高める必要性を海外との比較を交えて答えていたのには驚いた。
ここで想起されるのが小泉,高市両氏の政治手法の違いだ。先の3連休(9月13~15日),高市は衆院赤坂議員宿舎の自室に独り籠って公約作りの最終調整に傾注していた。一度も外出しなかったという。他方,小泉は「チーム小泉」の司令塔・木原誠二選対委員長を始め,政策通の村井英樹元官房副長官(5回・元財務官僚),小林史明元デジタル副大臣(5回生・元NTTドコモ),西野太亮内閣府大臣政務官(2回・元財務官僚)と奇しくも同じ赤坂宿舎で合宿を行っていたのだ。高市が政調会長時代を含め何事も独りで取り組みアップアップ状態に陥ることは旧安倍派の中で有名な話だった。高市に「責任ある積極財政」なるワーディングを編み出した前高知県知事の尾崎正直(2回・元財務官僚)や奈良選出の佐藤啓参院国対副委員長(参院2回・元総務官僚)などのブレーン,さらに外交・安保政策で助言する変わり種というか「外務省の奇人」山上信吾元駐豪大使がいる。それでも人に任せることはしない。要は,高市にはチームプレーができない。そこが小泉とは真逆である…(以下は本誌掲載)申込はこちら