高市早苗政権が発足して1カ月経った。内閣支持率は依然として高い。最新の『読売新聞』の世論調査(11月21~23日実施)で支持率が前回比1P増の72%,不支持率は1P減の17%。だが政党支持率では自民党32%(前回比±0)と内閣の高支持率にリンクしていない。同党内から早期の衆院解散・総選挙待望論が盛り上がらないのも肯ける。「政治とカネ」問題で失った支持回復は容易ではない。本誌が同紙調査で関心を抱いた「高市内閣の中国に対する姿勢を,評価しますか,評価しませんか」の質問に対する回答は,「評価する」が56%,「評価しない」は29%だった。改めて指摘するまでもなく,11月7日の衆院予算委員会(枝野幸男委員長)で立憲民主党の岡田克也常任顧問が,台湾有事ではどのような場合に集団的自衛権を行使できる存立危機事態になるのかと質した際の高市答弁が契機となった。こう答えた。「戦艦を使い武力行使を伴うものであれば,これはどう考えても存立危機事態になり得るケースだと考える。個別,具体的な状況に応じて,政府が全ての情報を総合して判断する」。従来から言っていたことだ。
しかし首相答弁となると,そうはいかない。これが高市流なのだ。思い出して欲しい。高市は首相として初めて臨む衆院予算委員会初日の午前3時01分に赤坂議員宿舎から公邸に移り,首相秘書官らと用意された答弁書の最終修正・赤入れを行った。首相答弁勉強会の総仕上げを,それこそ“晴れの日”未明3時に秘書官を召集して行った首相など歴代皆無であり前代未聞である。▶︎
▶︎これはもちろん,ワークライフバランス問題ではない。高市は中国側の猛反発は想定していたが,中国の薛剣・大阪総領事自身のXへの投稿「その汚い首は一瞬の躊躇もなく斬ってやるしかない」には少々驚いたに違いない。外国外交官に自分の首を刎ねると言われた首相はまずいない。
さらにその後,日中局長協議で北京を訪れた金井正彰アジア大洋州局長に対しポケットに手を突っ込んだまま応対した劉勁松アジア局長も対日「戦狼外交」を推進する王毅政治局員兼外相の“秘蔵っ子”だ。当該の王毅は23日,「(首相答弁は)触れてはならないレッドラインを越えた」と断じた。高市の対中姿勢はドナルド・トランプ米大統領の対中政策と連携するというよりむしろ国内の保守派を強く意識したものではないか。保守派だけでなく一般世論の外国人政策における内向き志向をいち早く嗅ぎ取っていた気配がある。先の読売調査にある「高市内閣が進める外国人政策に,期待しますか,期待しませんか」の質問の回答は,「期待する」62%,「期待しない」25%,「答えない」13%…(以下は本誌掲載)申込はこちら
