サッカーワールド・カップ(W杯)北中米3カ国大会に臨む日本代表の森保ジャパンは6月29日正午(米東部時間・日本時間30日午前2時)から、米テキサス州ヒューストンのNRGスタジアムで行われた決勝トーナメント1回戦でサッカー王国ブラジルと対戦し、1対2で惜敗した。凄い試合だった。NHK生中継で解説の本田圭佑も、王者ブラジルに肉薄した森保ジャパンを彼特有のワーディングで絶賛していた。せっかく前半は1対0でリードしていたのに逆転された、など愚痴は言わない。2022年秋に中東カタールで開催された前回大会と比べれば、素人の筆者でもニッポンサッカーが飛躍的に成長したことを実感できた。日本代表は現在の世界ランキング18位であるが、贔屓目ではなく、今やベスト8に入れる実力を備えたチームに成長したと讃えたい。
閑話休題。本稿では「成長」から話を始めたい。6月24日夕、首相官邸2階大ホールで政府の経済財政諮問会議・日本成長戦略会議合同会議が開かれた(両会議共に議長は高市早苗首相)。翌日25日付朝刊の日本経済新聞、朝日新聞両紙の見出しは、以下の通り。日経新聞(1面左肩)は「民間設備投資230兆円に―40年度―政府、戦略17分野で」とあり、関連記事(3面)が「債務圧縮、高成長頼み―『官民370兆円投資』政府が戦略―過去15年は不発」である。朝日新聞(1面左肩)が「年10兆円 追加支出想定―成長戦略、複数年の『別枠』新設も」で、関連記事(3面)は「370兆円投資 市場の信認は―政府、中長期の経済試算公表」である。両紙の見出しの立て方(特に関連記事)から取材で力点の置き方の違いが分かる。「日経」はリードに、<2040年度までの財政試算を示した。投資のてこ入れで国内総生産(GDP)の伸びが加速し、対比で国・地方の債務が低下する姿を描いた。……成長シナリオが実現しなければ債務だけが膨らむリスクがある>と記述した。記事中に野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストのコメント「試算通りに民間投資が増えなければ、この成長軌道は絵に描いた餅に終わる」を掲載したことで、同紙の立ち位置が理解できる。
一方の「朝日」は、関連記事中にこう書いている。<「大胆な投資」をうたう高市政権は、単年度の収支改善にこだわらない姿勢を強調。中核的な財政目標を「債務残高対GDP(国内総生産)比の安定的な低下」とする姿勢に転じた。この比率でみれば、財政赤字で債務が増えても、GDPがそれ以上に伸びれば財政が悪化していないと主張することができる> 本当かよ!と思うかどうかは読者次第である。ところで肝心な高市氏は、この日の合同会議(所要時間52分間)で自身が20分超の「異例の演説」を行った。「行き過ぎた緊縮志向と未来への投資不足の流れを断ち切り、技術を有する方々の社会実装、新たな市場獲得の挑戦を全力で後押しする」と言い切ったのである(「朝日」報道)。▶︎
縦横十文字、どこから観ても高市氏は「イケイケドンドン」の強気路線を突っ走っているようだ。では、高市氏の根拠はいったい那辺にあるのか。明らかに直近の読売新聞の世論調査が影響を与えている(その直後の日経新聞・テレビ東京合同調査も)「読売」調査(6月19~21日実施)の内閣支持率は前回比5P増の69%、「日経」・テレ東合同調査(26~28日)が前回比2P増の68%と、共に予想外の高支持率である。報道各社の調査では過半で高市内閣支持率が下落傾向にあり、その殆どが60%を大きく割り込んでいるのに、両社調査は突出して上昇トレンドなのだ。高市政権(首相)が元気付けられたのは疑いの余地がない。両社世論調査実施タイミングの中間点に、先の経済財政諮問会議・日本成長戦略会議合同会議が開催された。「たられば」の話は聞きたくないと言わないでいただきたい。7月中旬までに高市政権で初めての策定となる「経済財政運営と改革の基本方針2026(骨太の方針)」を念頭に、官邸サイドも両メディア側も共に同会議開催と世論調査実施をぶつけたのだとしたら、上出来のシナリオである。誰の手によるものかは措いて、論考を進める。
6月30日夕、再び官邸で経済財政諮問会議が開かれた。そして出席者に「【資料1】経済財政運営と改革の基本方針2026(原案)」(A4版38枚)が配布された。筆者の元にも同夜遅く届いた。同方針<第3章 責任ある積極財政に基づく「中長期経済財政計画」の(1.)「強い経済」の構築と「財政の持続可能性」の実現>に、次のような記述がある。
「こうした官民投資に加えて、研究開発投資や生産資源配分の効率化等、『成長戦略』の効果が十分に発現した場合には、2040年度には、国内民間設備投資額は年間230兆円、GDPは1100兆円に迫る経済成長が実現できること、また、一定の追加的な財政支出の下で、債務残高対GDP比が、概ね安定的に低下する姿となり、『経済成長』と『財政の持続可能性』の双方が実現できるとの見通しが示された」 上述の表現を「たられば」とは言うつもりは毛頭ないが、直ぐには「ハイ、そうですか」と頷けない。なぜか。やはり日経平均株価70000円超と対ドル円レート162円25~26銭(6月30日夕方5時時点)の円安の現状から、さすがの高市氏も、為替市場の信認確保の重大さを認識したに違いない。同原案にある財政目標で、GDPに対する債務残高の比率の引き下げを「核心的要件」と位置付けている。中国にとっての台湾統一が「革新的利益」であるのと同じとまで言わない。それでも高市氏は市場の反応を警戒するだけでなく、軽視すべきではないと深く自覚している。
では、高市政権の今後の政権・国会運営に問題はないのか。今特別国会期末7月17日に閉会し、高市首相は月末にも内閣改造・自民党役員人事を断行して、求心力回復を実現するのか。答えは、ノーである。物事はそう簡単に思い通りに上手くいかない。これが、永田町の通り相場である。先週末の土曜日になって永田町関係者の一部で今国会の会期60日延長説が急浮上した。野党の審議拒否による国会不正常化がその理由に挙がる。当分の間、首相はまさに休む暇もない情勢にあるようだ。
