高市早苗首相は、9月16日に自民党役員人事、17日に内閣改造(第3次高市内閣発足)、18日に副大臣・大臣政務官人事を断行する。第222回臨時国会は10月5日に招集し、首相の所信表明演説を行う。注目の内閣改造は、各社報道にあるように、現内閣の骨格を維持するため小幅改造となる。
では、「サプライズ」はないのか。有権者の一部にとどまらず、世間一般で「AI(人工知能)の時代」と騒がれる現在、若者世代からは拍手・喝采を浴びるに違いないサプライズは用意されている。かなり高い確率のサプライズ人事として、野党「チームみらい」(所属議員:衆院11人・参院1人)を率いるAIエンジニア出身の安野貴博党首(参院議員・35歳)がデジタル・AI担当相に抜擢されるというのだ。安野氏が党首を務める同党は、テクノロジーやAIを活用した政治・行政のデジタル化を掲げ、2025年夏の第27回参院選への挑戦を目指して同年5月8日に政治団体として設立された。そしてチームみらいは同選挙比例代表で有効投票総数の2%以上(得票率2.56%・151万7890票)を獲得し、安野氏が初当選した。と同時に、公職選挙法及び政党助成法上の政党要件を満たした。今年2月の第51回衆院選では、新人候補10人・元職1人の計11が議席を得た。党首の安野氏を含め、総勢12人の「みらい」は所属議員の平均年齢が約40歳で、実年齢も若い政党である(最高齢59歳の宇佐美登氏=当選3回から最年少29歳の林拓海氏=同1回)。安野氏起用の予兆はあった。高市氏は8月28日午後、首相官邸に安野氏を招き、木原稔官房長官同席で公開・非公開合わせて約50分間、AIとは何たるものかの基本ブリーフィングを受けた。チラ見せのデビューだったが、非公開の席では安野氏の入閣と同党の連立参加を要請したという。所属議員12人中30歳代半ばが6人の政党から飛び切り優秀な人材をデジタル・AI担当相に起用すれば、話題となるのは間違いない。台湾の蔡英文総統下の2016年10月に無任所閣僚の政務委員(デジタル担当)に就任し、世界的なブームを招来したオードリー・タン(唐鳳)氏が想起される。内閣改造で永田町の耳目を一身に集めるのが、林芳正総務相(衆院当選3回・参院5回=65歳)の去就である。林氏は官房長官を筆頭に外相、文科相、農水相、経済財政相などを歴任したオールラウンドプレイヤーだ。先の自民党総裁選で首相と争った4人のうち、首相サイドが「要注意人物」視する。同氏の後ろ盾の古賀誠元幹事長が、次の総裁選が政権獲りの最後のチャンスだと今回の改造で閣外に出るよう説得するものの、林氏が首肯しないと伝わる。
そうした中で、産経新聞(12日付朝刊)が1面トップで「林総務相が続投希望―内閣改造、首相に伝達―処遇焦点」見出しを掲げ、リードで次のように書いている。
《高市早苗首相(自民党総裁)が17日に実施する内閣改造で、林芳正総務相に留任の意向を確認し、林氏は続投したい考えを伝えたことが11日、分かった。首相は閣僚や党幹部人事を総合的に判断し、近く林氏の処遇を決める方針だ》。筆者の得ている感触では、現時点で「誤報」である。高市氏は、まだ留任の意向を本人に確認していない。首相側が林氏に残留を打診→辞退→慰留→断る、の儀式を経て最終的に閣外へ出ると、筆者はみている。気位が高いのだ。それでも、ギリギリ土壇場で慰留されて残る可能性はある。▶︎
▶︎それにしても高市氏は、そうした林氏の性格を含めて政治手法を見切っているフシがあり、端から留任打診をしないのではないか。林総務相の後継候補には腹案がある。それは、初入閣となる鈴木貴子党広報本部長(衆院当選6回・40歳)とされる。72年の本土復帰以降15回目の沖縄県知事選(13日投開票)で自民・維新・国民など5党推薦の新人・古謝玄太前那覇市副市長(42歳)が、辺野古移設に反対する「オール沖縄」勢力が支援する現職・玉城デニー氏(66歳)に約14万7000票の差をつけて勝利した。事前の予想を遥かに超える圧勝だった。
鈴木宗男参院議員の仲介で自民党執行部と政策協定を行った下地幹郎候補(元自民党衆院議員)が告示直前の8月25日、寝耳に水の知事選撤退表明を行ったことが勝利のトリガーとなったのは否めない。同氏不出馬を巡り、諸説乱れ飛んだ。曰く、28年夏の参院選で下地氏を自民党公認の比例代表名簿上位で処遇する。曰く、次の衆院選で沖縄県1区~4区のどこかで自民党現職と入れ替える。いずれも真偽不明だ。
高市首相は、福岡県議会の金銭授受疑惑が来年4月の統一地方選に与える影響が大きいことも危惧して、鈴木氏が果たした沖縄県知事選大勝利への貢献を評価している。
知事選投開票3日前の10日午前、官邸を訪れた同氏と20分超会談している。林氏政権離脱となると、鈴木貴子氏入閣、しかも総務相起用の可能性があった。
ただし、高市氏は側近からの「説得」を受け、貴子氏の閣僚抜擢を撤回した模様だ。結局、党広報本部長に留任となった。麻生太郎副総裁=鈴木俊一幹事長の義兄弟コンビを核とした党執行部の中でも際立つのは、続投が確定している小林鷹之政務調査会長(衆院6回・51歳)と、国対委員長昇格が確定した村井英樹筆頭副委員長(同6回・46歳)の2人だ。小林、村井両氏はともに東京大学→旧大蔵省→米ハーバード大学ケネディ行政大学院修了だが、高校と東大の学部が異なる。小林氏が開成中学・高校、村井氏は海城中学・高校。小林氏は現役時は東大不合格で慶應大学経済学部に進学したものの、翌年に再受験して東大文科一類入学・法学部を卒業した。
一方の村井氏は東大理科一類に入学するも転向して教養学部に進学し、教養学部総合社会科学科国際関係論分科を卒業している。
旧二階派所属の小林氏は、今や麻生派の主要客分。村井氏は岸田文雄首相当時の官房副長官であり、現在の旧岸田派は林氏離脱→木原誠二元選対委員長グループ誕生で、その代貸になる。麻生、岸田両元首相の源流は旧宏池会であり、共に財政規律派である。最近の財政政策に関するスコット・ベッセント米財務長官の対日牽制発言がクローズアップされる中で、党内主要プレイヤーの財政規律についての立ち位置が改めて問われている。それは措く。内閣改造を巡り名前を挙げた安野貴博(35)、鈴木貴子(40)、小林鷹之(51)、村井英樹(46)の各氏と古謝玄太沖縄県知事(42)も含め、いずれも若い。若手を重用する高市人事で、はたして内閣支持率は上昇するか?!